オモイメグラス『earphonic』【自由がゆえの完成度、ということなのかもしれない】
なんという完成度だろうか。いや、完成度という言葉は適切じゃないのかもしれない。何をもって完成というのかはよくわからないのだけれども、これがラジオ、いやストリーミング配信のプレイリストから偶然流れてきたなら、一瞬聴き流してしまって、そして後から頭の中で鳴り始めて、おや、これはどこで聴いたんだろうかと気になって仕方なくなってしまうような、そんな感じ。インディーズにありがちな、粗削りで秀逸なんだけれどもまだ未完成だよなというものなら、聴いた時に刺さる。ひっかかる。だが古い感じで言うならラジオで流れてきても未完成さが無いから一旦は流す。流れていってしまう。でも完全に流れてしまうのではないから、後から思い出す。このオモイメグラスというバンドは2012年から活動しているのでそこそこの経験を持っている。初期のMVはYouTubeでも10万回を超える視聴回数があるのである程度の支持を得ているようだが、このところのMVは数千回程度なので5年前とは状況が違っているのかもしれない。HPを見ると活動は音楽に限らず、アクセサリー製作など多岐に渡っていて興味深い。音楽活動に命を賭けるようなバンドとは違ったスタンスが、逆に音楽にも自由度を与えているのではないかと勝手に想像をする。そう想像した上で過去の曲と聴き較べると、やはり肩から力が抜けた自由なメロディであり歌であり音楽であるよなあと思わずにいられない。自由がゆえの完成度、ということなのかもしれない。
(2017.10.13) (レビュアー:大島栄二)