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コシモトユイカ『暴力とガラスと』【自家中毒のように自分自身に刺さっていく歌】

キュートなルックスの女性ボーカルがアコースティックなサウンドで歌い始めたあたりで、もう騙されてる。歌が進むにつれてこの人の毒に、刺に、支配されていくような魅力に足がすくむ想いになる。あなたの心に刺さりたいと言い、ストリートライブでは今日こそブッ刺しますと宣言をする。だが、この人の刺は、聴いている人に刺さっていくのではなく、まず、自分自身に刺さっていくのだと感じる。自分の刺が自分自身に刺さっていく中で、自家中毒のような混沌に陥り、それでもなお立っている。その自傷気味な刺さり方を目の当たりにして、刺は刺さっていないはずなのにあたかもブッ刺されたような気持ちになっていく。こういうミュージシャンは時々いる。なんでそんなことになるのか、もっと明るく楽しくやれば良いのにと思うが、生きることが苦行のように、歌うことで何かを償うような不器用さの中で生きている人がいる。それは確実にいて、そういう人がいる以上、そういう表現しか受け付けないリスナーもいる。このような表現者の歌は、その自虐性ゆえに本当にただ苦痛なアウトプットになることが多いのだが、稀に、痛みと安らぎの絶妙なバランスを持ったものになることがある。このコシモトユイカという人はそういう絶妙なバランスを持ちうるアーチストになる可能性があると思う。結論を出すにはまだまだ早いのだろうけれど。

(2017.10.6) (レビュアー:大島栄二)


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review, 大島栄二

Posted by musipl