Arcade Fire『Everything Now』【心地よさとぞわぞわした感動が併存する5thアルバム表題曲】
この夏、楽しみにしていた4年ぶり5枚目の新作がリリースされた。2枚組というボリューム感、楽曲の壮大さも限界まで行き切った前作から比べると、少し落ち着いた印象を受ける。ストリーミング主流のこのご時世に重厚なアルバムもいかがなものか、という考えがあったのかもしれない。真意はともあれ、新作はいい意味で手軽に聴きやすい。それでも彼らのエモーショナルで革新的、同時に奥行きある世界は存分に感じられ、その変わらない心意気がうれしい。名曲ぞろいで、アルバムにだれるようなところはない。新作のMVの中からどれを選ぼうか迷ってしまうほどだったのだが、表題作にした。ゆったりとした冒頭から、一気に走り出すように展開されるメロディのうつくしさに、はっとさせられる。終盤のコーラス部分まで、その心地よさとぞわぞわとした感動の併存状態は続く。彼らのエッセンスがぎゅっと詰まった、初めてのリスナーにこそおすすめしたいアルバムだ。
(2017.8.9) (レビュアー:夜鍋太郎)