RIDDIMATES『LOVE LAND feat.KODAMA NAO』【時世を経て、残る曲の強さは解釈次第で今の温度で、スイングできるのだな】
いろんな言語、価値観、また、沈黙もコミュニケーションになる場でふと話題を忘れることがある。ティーカップにスプーンを差し込んでミルクを混ぜようかという矢先に窓から見える空が綺麗だね、みたいなときに似て、優しいようで、しかしでも、何らかの忍従を求められるような場での“それ”もどこかの位相で空を見仰ぐために話題をティーカップに溶かすのだと思う。梅雨が明けたら、しっかりと夏になるのだろうか。どこでも季節がごちゃ混ぜになってきているので分からなくなってくるが、熱さでこの瀬での遍在する憂鬱の束を昇華させてしまえばいいのにな、と極端に想うまではいかずとも、日々の天気予報とはにらみ合いながらの時間の中で、彼らのような音楽と祝日や日々の夜は居たくなる。
公式HPのプロフィールでも一部引用するが、“ブラスロッカーズ・サウンドを掲げ、ありふれた音楽ではない、刺激のある音楽を創りだし、日々の喜びに変えるバンド”とあり、また、“熱くて、男臭くて、音を楽しんでいて、ご飯を良く食べる。生活の一部に音楽が常にある、そんな願いがあるんだか無いんだか。本気で遊んで、本気で音楽する、そんなバンドの物語。”とまで叮嚀に記されていて嬉しくなるくらいに熱く、湿っぽい日々の暑気払いしてくれるサウンドをこれまでも届けてきてくれたなかでのたまらなく心地良い新作『Over』からの佳曲。また、あのメロウでいつまでも音の狭間でゆらゆらと揺れていたくなる「Swandive」もしっかり入っているのも嬉しく、アルバムも多様なリズムやアレンジメントに凝ったものがあり、やはり『Over』そのものを聴いてほしいくらいのさらに拓けてゆく過程ともいえる凄みがある。児玉奈央がフィーチャーされながらも、或る世代の人たちが聴いたら一発でノックアウトだろう『LOVE LAND』。筆者としてはCharles Wright & Watts 103rd Street Rhythm Bandのヴァイナルで最初、聴いたのを想い出しつつ、その後から今に於ける再評価の中であちこちのクラブ、カフェで流れていたのは強調するまでもなく。時世を経て、残る曲の強さはどんなバンドがカバーしても褪せないというだけではなく、解釈次第で今の温度で、スイングできるのだなってところで、この曲も彼らだからこそのリズム感覚や在り方がとても心身をすっきり踊らせてくれる。湿ったニュースを乾かすような音楽と、気の置けない人(たち)と。たまにはそんなのもわるくない。そこで生きているあいだはせめて。
(2017.7.25) (レビュアー:松浦 達(まつうら さとる))