YUMEGIWA GIRL FRIEND『ギターロック』【シンプルで不器用な、初期衝動のみに突き動かされるギターロック】
シンプル過ぎて泣けてくる。アーチストがギターを弾いて「ギターロックが好きだ!」と繰り返す。それを聴く側はどう感じればいいのだろうか。「お前が何を好きなのかなんて知らねーよ」と言って突き放せばいいのだろうか。しかし芸術なんてだいたいそんなもので、表現する人に「自分はこれが好きなんだ〜!」という衝動がなければ、作品なんて生まれない。だからこの世に存在するほとんどの表現というのは平たく言えば「これが好き」というものばかりのはず。草間弥生がひたすらにピンクに水玉を描き続けるのもきっとそうだろう。だがそういうものの中からある者は草間弥生になり、ある者は単なる趣味人のシロウトになる。僕はこのYUMEGIWA GIRL FRIENDというバンドのこの初期衝動のような歌が好きだ。シンプルで明快なメッセージがあって、どこか懐かしい。彼らのこのシンプルさとあまりにも普遍的で凡庸なメッセージを不器用な感じで表現する姿が好きだ。このシンプルさと凡庸さをずーっと持ち続けたまま激しく活動をし続けることができれば、彼らなりの世界を確立することも可能かもしれない。一般論としては往々にして色気づいて「こんなカッコいいこともやっちゃえるオレ」みたいな表現に移行するし、そうなると、ただギミック的にカッコいい普通のバンドになる確率の方が高くて、だから彼らにはこのぎこちないほどの朴訥さをずっと維持し続けて欲しいなと思うのだが、それはちょっと勝手な願いでしかないのかもしれない。
(2017.5.26) (レビュアー:大島栄二)