初恋の嵐『真夏の夜の事』
【亡くなった人の記憶はいつまでも色褪せない】
亡くなった人の記憶はいつまでも色褪せない。2年前に事故で他界した僕の友人のfacebookには今も知己たちの言葉が寄せられる。半年ほど先に生まれたそいつの歳を、僕はもう超えてしまった。まだ生きてたらどんなバカなことを言い続けてたのかと、頭の中で彼の姿は生き続けるが、それは実際に生きていた場合のそいつの姿とはきっと似ても似つかぬ妄想に過ぎないという諦めも常にある。現実はいつも予想のつかない方向に行くものだからだ。
初恋の嵐のこの曲を、僕は運転中にカーステレオのラジオから流れてくるのを聴いた。深夜の暑い夏。暗い千葉の道路の上で理由も無く涙が溢れた。なにかそういう僕の事情があったのか、それともこの曲の優れた力なのか。それはもう今となっては判らない。もし今これを初めて聴いたとしたら、涙は溢れるのだろうか。その感性は残っているのだろうか。自分自身の年齢と、時代の変化はやはり残酷で、他界したヤツだけが取り残されているのか、それとも自分が押し流されているのかは実はよくわからないのだと思う。
初恋の嵐のボーカル西山達郎はデビュー直前に急逝。数曲が残されたのみだが、当時の音楽ファンの心に強い印象を植え付けた。もしも仮に生きていて、バンド活動を続けていたとしたら、順調に伸びてビッグな存在として今もあるのか。それとも多くのバンドの例に漏れず数曲のヒットとともにやがて解散し、ああ、そんなバンドもいたねということになっていたのだろうか。もちろんいずれも妄想に過ぎない。どちらの結果になったとしても、生きていたその後を見てみたかったなと思う。この曲で彼らが正式にデビューした2002年7月10日からひとまわりが過ぎた今日、そんなことを考えてみるのも悪くはないだろう。
(2014.7.10) (レビュアー:大島栄二)