GRAPEVINE『すべてのありふれた光』
【優しく誰かの味方であるための音楽が誰もの光でなくていいように】
ありふれていても、余りに社会的に個体内の許容量を超えることがある。だからこその、単節と沈黙は金なのかもしれない。余剰は要らない。本当に、奇遇にもこのアルバムのプロデューサーたるホッピー神山が関わった『退屈の花』と同じレコード店で買った ...
anzu『ロンポワン』【ほとんどの人が超えられない一線を軽々と超えている音楽やセンス】
めっちゃ好き。アンニュイとかスタイリッシュとかいう言葉が全部陳腐になるほどにすべてが完成している気分。20年ほど前に原田知世がトーレヨハンソンをプロデューサーに迎えてスウェディッシュポップに傾倒していった結果生まれたアルバム『I co ...
鈴木実貴子ズ『アホはくりかえす』【信念を持たないアホなのか、信念を持ったアホなのかという違いがあるだけ】
最近流行りのあるあるソングかと思った、最初は。バンドマンがこんなことをよくやるよねと、ほら、ちょっと前にYouTubeでもめちゃ再生されたミュージックビデオあるあるみたいな感じの。あれが注目されたおかげでそういうバンドマンあるあるソン ...
Ben Kweller『Heart Attack Kid』【音楽の持つ力強さを感じさせてくれる復帰作】
これはうれしい復活だ。musiplカムバック大賞があるとしたら、彼に差し上げたい。いらないと言われても、是非ともお送りしたい。5年ぶりの新曲というだけならば、寡作なアーティストには普通のことだが、彼に関しては、ただただ復帰がうれしい。 ...
kobore『東京タワー』【変われずにそこにあるものの象徴なのではないだろうか】
東京の暮らしに絶望的な心持ちを投影するというのが昨今の東京ソングには多くて。それは結局昨今の東京に暮らす若者を中心とした住人の心持ちをそのまま映しているということなのだろう。この曲でも「こんな街に何があるんだよ」「夢も希望も無い方が楽 ...
Dear Chambers『東京』【粗くざらついた声質での絶叫の中に、イライラや焦りや絶望が現れては消え、消えては現れ】
東京をテーマにした曲はたくさんあって、それはすべて東京という特殊な街と作者の関係性を赤裸々に表現したものだ。地方都市をテーマにした曲にはノスタルジーばかりが漂うのに、東京の曲には単純なノスタルジーではなく、生命そのものの格闘が描かれて ...
星野源『POP VIRUS』
【彼自身の想いはいつも独りきりで内奧のままに他者へ手を差し伸べている】
年明けの或る病院で「インフルエンザなんてなくなってしまえばいいのに。」と小さい子供が母親に言っていた。ほんの少しだけ文脈が欲しくなる瀬に。ほんの少しばかり、を自在に行き交う星野源の巨大さと器用さは心配になるほどで、ユーモアと、現代に於 ...
フィッシュライフ『むしかご』【むしかごから飛び出して自由をつかむわずかなチャンスなのかもしれない】
もしも○○になったらどうしよう。人はそんなことばかりを考えて不安を抱えたりくよくよしたり。いやいやいつかどこかで何か予想外のことは起こるんだから、起こった時のためにいろいろと考えて備えていた方がいいよと用心深い人は言うが、予想外のこと ...
明石百夏『トイレンナーレ体操』【ちょっと歩いてトイレのドアを開けるまでに、誰もが口ずさむ歌が、日本にはまだない】
SF映画の未来都市で真っ白な居住空間を見ても、宇宙空間に浮かぶメカニカルな巨大戦艦を見ても、この中で人間が過ごすとしたら、食べるものと寝るところと、トイレが必要なんだと、ぼんやり思う。人間の進化や、テクノロジーの進化は、食べて寝て、ト ...
Swindle『Coming Home』【ゴージャスさ、洗練され具合がかっこよすぎる】
受験用英語しか学んでいない(お行儀のよい)わたしは、このアーティスト名が「(金を)だまし取る」という意味だと、すっかり失念していた。普段、だまし取る、なんて日本語でも使わないお行儀のよさ故、仕方あるまい。ただ、このような名前を掲げて、 ...