Ibeyi『I Wanna Be Like You』【キューバ系双子姉妹による浸透力の強い作品】
滋養に満ちた音楽、というのが第一印象だ。民族的なエッセンスが感じられつつ、モダンでもある。パリ育ちのキューバ系双子姉妹。彼女たちの背景が曲に生きているのは間違いない。リズムの多彩さ、ボーカルの(表現力、声色、音の)豊穣さ。それらの要素 ...
Fitness Forever『Canadian Ranger』【ファニーなセンスと軽快なポップスに感覚の歩幅を変えてみるのも或る種の】
或る種のエキゾチズムは、状況次第で書割の部屋に格納されることが多い。小さい竹林と庭園を作った部屋に南国のリゾート・ホテルの昂揚があったり、遠い極寒の地で頑なに中国茶器や茶葉にこだわり続けていたり、風水である程度のその日のリズムを決める ...
桑原あい×石若駿『ディア・ファミリー』【アーチスト同士が呼吸を併せながら作り上げていく演奏風景】
土日のニュース番組のオープニングテーマのこの曲。夜なのに朝のような爽やかさでとても印象に残る。番組のテーマの時には楽器構成がどんなだとかまったく気にしてなくて、だからこうしてMVになって見てみると改めて驚く。ピアノとドラムだけかよって ...
ザ・クロマニヨンズ『どん底』【ヒロトとマーシーの音楽は若い人にはどう映るんだろうか?】
今の若い人はザ・クロマニヨンズのことをどんな風に感じるんだろうか。若い頃にブルーハーツに接した人たち(今は完全に中年)はクロマニヨンズに当時のブルハのイメージを当然重ねるだろうし、そのイメージを持って聴くのと、今の10代から20歳くら ...
メロウ・イエロー・バナナムーン『胸の裏』
【耳について離れない、女性ボーカルが歌う「ベイビー」】
多くの曲で「ベイビー」という言葉が使われる。その多くは男性が女性のことを指して声をかけるもので、そうでなければ本当に小さな赤ん坊に向かって使われる用語だ。だが、この曲では女性ボーカルが「ベイビー」を多用する、繰り返す。とても新鮮で心地 ...
源川瑠々子『カラ―』【歌は歌い継いでる限り誰かに届くのです】
幼少期はポップスとして『こんにちは赤ちゃん』をよくラジオで耳にした。今は、放送局では自主規制ソングだそうです。理由は、赤ちゃんを失ったお母さんが聴くとドキッとする、と投書批判があったらしい。歌自体がやりきれないフォーククルセダーズの『 ...
King Krule『Half Man Half Shark』【かっこいい曲を聴いて、心のひだのようなものがざわめく感覚】
ぞわぞわ。かっこいい曲を聴いて、心のひだのようなものがざわめくときの音がある。そんな感覚を久々に味わった。デビュー当時、彼が19歳くらいのときのライブを見たことがあって(と言っても最近だが)、すでに堂々たる雰囲気をたたえていた。それで ...
スカート『視界良好』【発見されない限り埋もれたままのニュアンスが多く、だからこそ遠回りばかりな人たちへと】
日本語詩の持つ寂寥感や、侘び寂びがなかなか輸出されないように、切なさも同じようで、というのは故郷(に近いどこか)に対しての視座や思慮がこの数年であちこちで変わったと証左なのだろうか。
小さな町の診療所はごった返し、都市の人 ...
LINE wanna be Anchors『人生』【苦悩と疾走の繰り返し、突き放すような抱擁】
多くの若者が不安を抱えているように、きっと彼らも不安を抱えながら音楽に賭けているのだろう。イントロでミドルテンポなアカペラのようなスタートを切ったこの歌が、1フレーズ終わったあとから急激にテンポアップしていく。その勢いがたたみかけるよ ...
Liam Gallagher『For What It’s Worth』【見事なOASISの「新曲」だと思って聴くことも十分に可能なアルバム】
今さら言うまでもなくOASISのリアム。リアム・ギャラガーがシンガーソングライターとして復活して、ニューアルバムはOASISだよなあとなんか嬉しくなる。もちろん何がOASISなのか、どんな音楽がOASISなのか、人によって違うだろうし ...