Vampire Weekend『120 Minutes of Harmony Hall Guitars』【反復の中に重なる瞑想、枯山水のような風情】
ヴァンパイア・ウィークエンドはデビュー当時から知的でエリートなところを持ちながら、どこか実験者たる風情もあったが、その印象とは別にあっという間に00年代後半10年代前半のUSインディーシーンを代表するバンドになってしまった。ブルックリ ...
カリオンズ『黄昏る』
【ああ、この曲に出会って今日は幸せだったなあ】
僕らの日々の活動はすべて幸せな気持ちを探すためにある。本当に幸せかどうかなんてどうでもよくて、幸せな気持ちになれるいろいろなものを探す。幸せな気持ちというのは儚いもので、見つけたと思ったら賞味期限みたいなものがあって、どんなに大切にし ...
ゲスの極み乙女。『だけど僕は』【言いたい事はわかるけど、わかったらもう終わりさ】
あの騒動以来叩かれて、一方の当事者が公に謝罪を要求されて干されているのに音楽活動を淡々とするのはどうなのかという批判に晒され。あれはいつの出来事だったのだろうか、単に過去の話というだけになってしまった。その騒動についての是非を問うのは ...
Leonardo Marques『The Girl From Bainema』
【花も枯れれば、音楽もずっとは鳴り続かない】
フラワーショップに行くのは楽しい。その時々に並ぶ花の香りと店内のBGMと贈り物を選ぶ人たちの雰囲気が優しくなっているようで、最近ではプリザーヴド・フラワーのような半永久的に枯れない花より、ソープフラワー、つまりは石鹸できた花が目立つ。 ...
Paul McCartney『My Valentine』【贅沢の極みともいえる曲とMV】
バレンタインデーにそれっぽい曲をと思うと、国生さゆり『バレンタインデーキッス』がこれが思い浮かぶ。国生さゆりのでもいいんだけれど、今回はこれにしときたい。終始暗いムードのテンションで歌われるのだが、歌詞は愛と希望に満ちた力強いもの。そ ...
White Lies『Tokyo』【やんちゃしてた頃の仲間と会った感覚になれる「ザ・UKロック」】
いかにも、UKロックだな、という第一印象だ。しかも「一昔前」の。と言っても、ネガティブな意味合いはまるでない。ダークさとポップさが心地よく混ざり合うバンドの音とメロディ、そこに低音のボーカルが響くように重なり、頭から離れない。この「顔 ...
毛玉『雨降りの午後に珈琲を』【つかの間のどっちつかずな時間帯のブレイクを許してくれるよう】
この雨が上がる前に 決めなくちゃ 大事なこと
電気ケトルが不安をあおって お湯を沸かす
(「雨降りの午後に珈琲を」)
珈琲は飲めないが、紅茶、ハーブ・ティーとサンドイッチなどでブレイクをする時間が欠かせず、 ...
The Echo Dek『City Light』【君は昼も夜も街を行く、そんなの結局ろくなもんじゃないよ】
シティライトというと勝手にシティポップかと思い込んでしまう。いやこの曲がシティポップなんだといわれればそれを否定するつもりはないけれど、僕の中ではポップじゃないと思うし、じゃあロックなのかというとそうとも言い切れず。よく判らないなりに ...
米津玄師『Flamingo』【所在なさ、変わらなさにこそ頼もしさをおぼえる】
遊女に誑かされた一人のか細き青年が足を引き摺りながら、地下を巡る。様々な解釈はすでになされている意味ありげなMVで、それは個々で考察してもらった方がいいが、私的には吉行淳之介な風趣と阿部公房のひずみを感じたりもした。澄み切った闇に滞る ...
Spangle call Lilli line『mio』【その影響をあからさまではなく、濃霧のような音像にアートとして溶かして】
今でさえそのプロジェクトのために様々なメンバーたちが集まって一つのオブジェのような何かを作るというのは珍しくなく、インスタレーションとしての表象行為として音楽がライヴでの再現可能性を迂回して成り立つこともある。即興とポスト・プロダクシ ...