さんかくとバツ『街灯』【このギターサウンドはさんかくでもバツでもなく、二重丸、いや、ハナマルだ】
良いギターの音を聴いていると、やっぱりロックはギターだよなあと思わずにいられない。ロックもどんどんと良いバンドが出てきて、ちょっとの違いと差別化して目立ちたいという狙いとで、様々なタイプのロックが登場してきた。いや、いいんですよ。ピア ...
YeYe『暮らし』【音楽はささやかにフィットして、疲れた視野をほんの僅か補整してくれるようなもの】
なんともないふりをしあって
心はトゲトゲ
大きく包み合おう
(「暮らし」)
中央側、集権側に牽制するほどに正論が求められる瀬に、個々がいわゆる形骸化したマス・メディ ...
FUKI『ラストシーン』【聴いていてどんどん引き込まれていく個性的な声】
独特の声。この喉の奥を巻き込んでいるような声。多分好き嫌いが分かれるだろう。正直いうと僕自身最初に聴いた瞬間は「?」と思った。ちょっとパスと思った。YouTubeだからさっと次の何かに移ればいい。そんなことは簡単だし実際に最初の10秒 ...
TOKYO LIE LIE『宵に時雨れて』【作者の実像が不明なままに多くのファンに支持されることもけっして少なくない】
音楽をやっていてそれを公表して第三者に聴いてもらおうという人は、普通自分が何者なのかをアピールする。ライブをやるから来てよ、音源を出したから聴いて(買って)よ。そういうアピールが次の音楽表現の糧となる。だが稀にそういう自分アピールをほ ...
CARIBOU『Never Come Back』【心を和らげるもの、うつくしい世界に私は救われた】
レビュー掲載時には状況がどうなっているのかわからないが、Caribouの新譜が出たのは、新型肺炎によるパニック(紙製品の買い占め、突然の臨時休校、イベントの自粛呼びかけ、などなど)が始まったタイミングだった。社会全体に広がる不安の中、 ...
Kitri『Akari』【静謐なイメージの上に多様なバリエーションを獲得する挑戦】
つい先日テレビでKitriを目にして。前回レビューした『羅針盤』で感じた透明で孤高な雰囲気が鮮烈だったから、テレビで誰かの伴奏的に演奏をしていたKitriの2人はそれをかなりギャップを感じて驚いた。彼女たちのような浮世離れした静謐なイ ...
sea’s line『Good Night』【すべての休息が必要な人に贈りたい、心を包んでくれる歌】
間違いだらけだけど、それも悪くない、悪くない悪くないね。こんなフレーズが繰り返される。優しいメロディだが、この繰り返されるフレーズが与える優しさの方が数百倍のインパクトで聴く者を包む。けっして強い調子で歌うわけでもなく、力を込めてパワ ...
川本真琴『ゆらゆら』
【ドロドロとした明るさで聴く者の心に突き刺さってくる自由な表現】
ずっと気になるアーチストというのはいる。一時スターダムとやらにのっかって大人気になってライブに行きたくてもチケットさえ取れないという状態にあって、そんな時に気になるのは当たり前だ。しかしやがてそんなスターダムとやらから距離を置き、とい ...
北里彰久『出発』【過度なギミックが無く、凛然とした歌が届く】
小さい声に耳を澄ますと、沈黙に意趣がほだされている気になる。爪弾かれるビート、弦の軋み。空間のさざめき、演者の吐息、オーディエンスや風や不意のアクシデントまでの、刹那さ。昨年に亡くなった大家ジョアン・ジルベルトは破天荒にして奇異な生を ...
Deep Sea Diving Club『あくまとおどる』【どちらか、ではなく、どちらも。組み合わせによって複層の景色を見せることを可能にしている】
音楽をサウンドやリズムの種類で分類するジャンルという指標は、とても便利なのだけれど、本当にそれを表現の分類として十分なものとしてていいのかという疑問は常にある。長渕剛と山下達郎を同じ音楽表現者として並列に置いていいのか。いや、違うだろ ...