KICK THE CAN CREW『千%』【もっと単位を変えてみたらまた歩み直せる気がしてならない】
個人的な感慨に過ぎないかもしれないが、あわててフィナーレよりカーテンコールを求める方がいいと思えるように、きっと世界、日本遺産を巡る感動が以前ほどなくなってゆくのは、遺産を愛でるならば、今の進行形で失われてしまう触感の下でのものを詩性 ...
アキオカマサコ『Less is more 〜より少ないこと より豊かなこと〜』【あなたはあなたになればいい、それでいい】
北海道をベースに活動しているシンガーソングライター。力を入れず、かといって力を抜かず、適度な等身大の歌声が心地良い。MVでは笑顔なのか諦めなのか、内心を読み切れないニュートラルな表情で淡々と歌っている。そのあまりのナチュラルさに、この ...
Self-Portrait『ライブハウスで逢えたら』【バンドマンには「オレの音楽で世界を変えてやる」と心から信じていて欲しい】
バンドマンが「ライブハウスで逢えたら」と歌うのはやわらかなお誘いだし、たった数分で起こせる奇跡というのもバンドマンが思っている自己の拡大解釈のようなものなので、そういう意味ではこの曲は音楽関係者としてちょっとだけこそばゆい気もしないで ...
Day Wave『Promises』【イントロから虜になること必至。ドリーミーで切ない名曲】
やたらとポップで疾走感もあるのに、切なくなるのは何故なんだろう。そして切なく感じれば感じるほど、この曲のことが好きになってしまう。今さらどや顔で言うことではないけれど、いい曲との出会いって本当に恋みたいなものですね、と私はどうしてこん ...
RIDDIMATES『LOVE LAND feat.KODAMA NAO』【時世を経て、残る曲の強さは解釈次第で今の温度で、スイングできるのだな】
いろんな言語、価値観、また、沈黙もコミュニケーションになる場でふと話題を忘れることがある。ティーカップにスプーンを差し込んでミルクを混ぜようかという矢先に窓から見える空が綺麗だね、みたいなときに似て、優しいようで、しかしでも、何らかの ...
オガワマユ『定点観測』【あと数センチに手を伸ばしてみようとする意志】
軽快なホーンセクションから始まる曲で、軽快で絶対ポップだぞと思うのにどうもポップではない。いや、曲調はポップそのものなんだけれど、ポップと言い切る自信が無い。何故だろう、何故なんだろうと思うけれど、行き着く答えはこのオガワマユという人 ...
GRAPEVINE『Arma』【多少はくたびれながらも艶美な「声が届く」肌理細やかな様相は変わらずに】
文学的な、という形容詞が無化している瀬にでも、有名な芥川龍之介や太宰治、または永井荷風などの古典群でも擦りきれるほどに多くの人たちに深く耽読されていったり、いや、それこそ海外文学全集みたいなものはどうなってゆくのだろうかと杞憂を持つ。 ...
Maison book girl『bath room』【変拍子の曲のノリ方について、現場のヲタの方々はどうしているのだろうか】
変拍子の曲のノリ方について、現場のヲタの方々はどうしているのだろうか。私はベリーダンスの方にアラビア音楽の説明を受けるまで分からなかった。日本人でもカッコよく変拍子を踊るベリーダンサーは、エジプト伝統曲の10拍子を「123-12-1- ...
shuto『off』【夜限定の、落ち着かない心を代弁してくれているような】
そろそろか、もうそろそろかとずっと思いながらも全然歌が始まらなくて。もう始まるか、ついに始まるかと思っても始まらなくて。で、始まったのは1分46秒。単なる歌モノとして売れたいのならもう完全に失格でしょというくらいの気の持たせ方。いやあ ...
Laurel Halo『Jelly』【現在のエレクトロミュージックの最先端】
「宅録女子」というカテゴライズ自体の良し悪しは置いておくとして、もはやその呼称(によるイメージ)が枷になるくらい、彼女は自由で刺激的な作品を生み出した。音数過多という意味ではなくて、すさまじい情報量の音楽だし、時間をかけて計算され尽く ...