CoCoCinema『midnight romance』【こういうのを一皮むけたといえばいいのだろうか。イイよ、イイ!】
こういう声、やっぱ好き。歌ものポップを聴く時になんといっても重要なのは声だと思う。そのことに異論があるのも知ってるし、同意する人が僕の好きな声を好きだとも限らないわけで、だからこの曲をこの声を好きだという僕のレビューがまったく参考にならない人がそれなりにいることだって知ってるけれど、全員の満足と同意を得られないレビューに存在価値がないということでもないので、ここはまあ進めさせていただきますよ。さわりだけでも聴いてみて、自分の好みとは違うという人は静かに別のページにクリックして去っていただければと思う。
この舌足らずというか、爽やかにまとわりつく女性ボーカルが軽快なメロディーとビートに乗ってスタッスタッと軽快に鳴っていく。武器だ。しかし過去の曲を聴いてみて、あれ、1年前にも彼らの曲を聴いているぞと気づく。その時にはそんなにひっかからずにスルーしていたこともわかる。なぜだろう。それは同じ声が効果的に響いていなかったからだ。彼らのHPにあるプロフィールを見てみる。ときめきマジカルおしゃれポップ5人衆とある。しかし、写真には4人しか写っていない。Gt/Voを募集中と書いてある。いないのなら4人衆でいいんじゃないのか。しかしきっと5人衆としておきたい理由があるのだろう。それは1年前のMVをあらためて見るとなんとなくその理由がわかる。そこには男性のギターボーカルがいる。いるというより、むしろメインボーカルで、彼の歌に、現在のボーカルももこさんの歌が添えられているという印象。彼らはその5人のオリジナルメンバーで活動をスタートさせ、今は欠員となっている男性ボーカルをメインとして曲を作ったのだろうし、曲のキーも決められていたのだろう。しかし彼は抜けた。ボーカルがいなくなるというのはバンドにとって致命的ともいえるほど重要な変化だ。それまでのファンも男女混声ツインボーカルバンドとして認識していただろうし、そこで女性ボーカルのみになると、物足りなさも感じられてしまうだろう。
しかし、しかしだ、ももこさんが唯一のボーカルとなって、彼女を中心とした曲作りが今は行なわれているはず。それまでもうひとりのボーカルがいることでももこさんも自分は半分かそれよりちょっと少ないくらいの責任で良いという心理だったのに、突然自分がメインとなることで、100%の責任でやらなきゃということにもなったかもしれない。その他の要因も含めさまざまな変化のもと、バンドを続ける中で楽曲がももこさんの良いところを100%活かすようになってきたのではなかろうか。その結果、この曲はとても良い。声質の良いところが十二分に前に出てきている。こういうのを一皮むけたといえばいいのだろうか。イイよ、イイ。彼らの気持ちの中にはまだ初期の5人でやっていたスタイルをひとつの理想型として求める気持ちがあるのかもしれないが、もう4人のままで突き抜けた方がいいんじゃないかなあと個人的には思う。もちろん異論はあることも知っているんですけどね。
(2020.8.11) (レビュアー:大島栄二)