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魅惑ハレーション『スポットライト』【その空気の変化、視点の遷移がダイナミックで鮮やかで、恐れ入る】

語るように歌う。その語りがこちらに届くのか届かないのか。それは語り口のリアリティに大きく左右される。この魅惑ハレーションというバンドのボーカル、シキの歌にはそのリアリティがある。歌を上手く歌おうとばかり考えている歌手の意図はすぐに筒抜けになる。歌が上手く上手くと願うあまり、歌っている言葉の意味に歌い手の心が寄り添えないからだ。じゃあ上手くなくてもいいのかというと、そんなことはないよ。ド下手とまでいかなくとも下手な歌い手の歌など聴きたくないし、聴きたくないものがこちらに届いてくるわけがない。

上手い歌というものは何なのか。その決まりは無いし、オペラ的な上手さとポップミュージック的な上手さは違う。ポップミュージックとロックンロールの上手さもまた違う。

彼らの歌は本当によく届いてくる。響いてくる。だからMVをより注視する。すると前半と後半で色合いがまったく違うことに気付く。場面は一貫してライブハウスのような場所で、流して聴いていたらそんなに気付かないかもしれない。だが、よく見ていると、前半では見られているバンドという佇まいで、見ている観衆から自分がどう見えているんだろうかということを気にしているような、緊張しているかのような風情がある。だが2分15秒あたりから様相は一変して、視点は客席からステージ上のシキに移る。もはや観客が彼女を見ているのではなく、彼女が観客を見ている。そして訴える。「世界の真ん中へ君を連れていくから」と煽る。この空間の世界を自分が創るんだという意志に溢れていく。その空気の変化、視点の遷移がダイナミックで鮮やかで、恐れ入る。

(2020.7.6) (レビュアー:大島栄二)


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Posted by musipl