The Drums『Blood Under My Belt』【激動の日々を経た復帰作は、原点回帰の軽やかサーフポップ】
約2年半ぶりのアルバムが発売されたばかり。デビュー当時からメンバーが徐々に減っていき、結局、二人プラスサポート体制に落ち着いた、というここ数年の認識だったが、もはやJonathan Pierce一人のプロジェクトになったようだ。前作のアルバムの時点でテーマの一つは「喪失」だった。そこから一人きりの状態で、デビュー当時を彷彿させるようなサーフポップを発表することには意図があるのだろう。ゲイであることを隠してきた日々、家族の無理解、失われていくメンバー、同性婚の発表。激動と言えるようなこの数年間を経て、ソロとなり、音楽活動を続けていく上で、原点回帰の志を持って再始動する、ということなのかもしれない。もちろん、これはただの見当違いの個人的な推測にすぎない。だがこの曲を聴いて、わたしは解き放たれた彼の気分を感じたし、そうであってほしいな、と願った。澄み切った青空の下で身体を伸ばしているような、心軽やかになる、すてきな曲だ。
(2017.6.21) (レビュアー:夜鍋太郎)