LINE wanna be Anchors『人生』【苦悩と疾走の繰り返し、突き放すような抱擁】
多くの若者が不安を抱えているように、きっと彼らも不安を抱えながら音楽に賭けているのだろう。イントロでミドルテンポなアカペラのようなスタートを切ったこの歌が、1フレーズ終わったあとから急激にテンポアップしていく。その勢いがたたみかけるように1曲を駆け抜けていく。全編でわずか3分37秒。余計なものを削ぎ落として背骨と心臓だけにしてしまったような曲なのに、繰り返されるフレーズがある。「僕はギターを弾いて 最高速で走り出した」。ミュージシャンにとってギターを弾くというのはひとつの象徴のようなもので、全力で生きていくことを言葉としても言外の意味としてもダイレクトに意味しているのだろう。そしていくつかの苦悩の表現とその疾走を交互に繰り返し、最後の最後でタイトルに使用した「人生」の意味を彼らなりにズバッと表明する。表現として完璧だ。こういう感じで自分自身の宣言のような、それでいて同時に対峙する者たちへの挑発のような表現。けっして上から言うのではなく、対等な、一寸先など見えない者同士の突き放すような抱擁。曲の長さは時間としても短いのだが、それ以上に短く、一瞬に感じられるような気がした。
(2017.11.13) (レビュアー:大島栄二)