LEODRAT『コバルトマーチ』
【成長とともに世界との折り合いをつけていける、スカッとする楽曲】
小気味いいテンポで徹頭徹尾突き進んでいく曲。動画の解説欄には「LEODRATの持ち味であるシンガロング必至の歌」とある。うん、確かにシンガロングしたい。1番が終わって間奏に入っても演奏のテンポもリズムも特に変えること無く続いていき、知らないうちに2番が始まっていく。その構成は全編がサビのような展開になっていて、ドラムの特徴的なリズムが進んでいくぜ感をより強調しているようだ。
堺発のメロディックパンクバンドの彼ら。この曲からパンク的な匂いはまったくしないのだが、それはもはやパンクという言葉が持つ意味が変わってしまっているのかもしれない。だが過去のMVなどをチェックするとパンク的なハードさもあって、だから彼らの曲の中の幅の中でももっともパンクから距離を置いた楽曲なのかもしれない。パンクというとかなり社会への抵抗といった要素を持つし、それを音楽的メロディ的リズム的な部分でどう表現するのかというのは難しいところだが、やはり共通する要素としてハードな何かというものは不可欠なのだろう。バンドを続けていく中でメンバーもリスナーも年齢を重ねる。その中でいつまでもハードな抵抗的姿勢を続けていくことはなかなか難しくなるはずで、そういう意味ではこの曲のようによりポップな要素を取り入れることで、最も層の厚い普通のリスナーを惹き付けていくし、バンドマン自身の成長とともに世界との折り合いをつけていくことが容易になる。彼らの全ての楽曲を追えているわけではないが、こういう楽曲を出していくことで、もしかすると古くからのファンからは一部反発もあるかもしれないが、それ以上に幅広いファンを獲得していける可能性を探っていけるのだろう。少なくとも、僕はこの曲好きだ。とてもスカッとする楽曲だし、パフォーマンスで好感持てる。
(2020.5.18) (レビュアー:大島栄二)