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edda『バク』【世の中に埋もれているあらゆる感情や声達を人々に伝えたい】

怖い。絵が怖い。クレジットによるとイケガミヨリユキという人のイラストなのだそうだ。ネット上で見られるイケガミヨリユキ氏のイラストを見る限りではそこまで怖さが先行しているのではなくて、むしろファンタジー寄りのほのぼのとしたテイストが主流のように感じた。だから、もちろんこのイラストの持つ何かが影響している部分はありつつも、この怖さはeddaが本来持つ表現の何かに由来しているのだろう。

そう思って過去のMVをいくつか見る。うん、怖い。MVもだけれど、曲そのものが怖いのだ。怖いという言い方は語弊があるかもしれない。3年前に活動を始めたすぐから公開してきた『半魚人』『不老不死』といったMVの持っているおどろおどろしさ。それも僕の価値観から見た光景としておどろおどろしいという表現になっているだけで、eddaが持っている固有の景色としては普通なのだろう。だがそういう景色を普通のものとして見えている心からすれば、いわゆる「普通」の日常的光景こそがおどろおどろしくて仕方のないものなのだろう。普通の日常を普通のものとして肯定も否定もすることなく当たり前に受け入れている人からすれば、別の誰かが持っているであろう景色とのギャップに気付くことは簡単ではなくて。だから、こういう表現者によるギャップをギャップとして突きつけるような作品が、おどろおどろしくあることは当然のこと。その当然のようなおどろおどろしさによって、普通の人は多様な世界や景色の存在に気付くことができる。

公式HPによれば、世の中に埋もれているあらゆる感情や声達を人々に伝えたいという想いから、「物語を語り継ぐ」という意味を持つ言葉「edda」をアーティスト名にして活動しているという。なるほど、その意図通りに伝わっているなあ。『バク』というのは夢を食べる動物といわれている獏のことか。MVのアニメでは寝かせつけられた少年が夢の世界に入っていく。その夢の世界の怖いこと。だがその怖さを一瞬にして受け入れ、夢の中を司る不思議な生き物と楽しく過ごす。やがてそこから少年が去っていくことを不思議な生き物が哀しく思うくらいに。一見おどろおどろしい世界のことを拒絶してしまうのは大人の方で、自分が理解できない何かを頭から否定してしまうのだろう。そういう「普通」から拒絶された声を届けているというeddaの活動はとても尊いなあと思わずにいられない。怖いけど。

(2020.5.14) (レビュアー:大島栄二)


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review, 大島栄二

Posted by musipl