桑原あい×石若駿『ディア・ファミリー』【アーチスト同士が呼吸を併せながら作り上げていく演奏風景】
土日のニュース番組のオープニングテーマのこの曲。夜なのに朝のような爽やかさでとても印象に残る。番組のテーマの時には楽器構成がどんなだとかまったく気にしてなくて、だからこうしてMVになって見てみると改めて驚く。ピアノとドラムだけかよって。そういえば上原ひろみなんかもトリオで長いこと演奏活動やってるイメージあって、それはピアノとベースとドラムで、だからそれからベースを引いた構成がこれなのだが、それでもドラムとピアノだけっていうのは大胆だなあという気がする。ロックバンドでも昔からずっとボーカル+ギター+ベース+ドラムという組合せが基本といわれてて、その形にしなきゃダメなんだという先入観に囚われているバンドマンも多かったと思うけれども、時々ギターレスやベースレスのバンドもこの15年くらいはよく見かけたりする。しかし、どうしてもそういうバンドは「ギターレス」とかいわれたりして、だから、何かが足りないという印象が拭えなかったりする。別にそうではないのにね。でもこの組合せは、別に「レス」ではない。ピアノだけで十分に成立するところにドラムが加わったという印象で、「ピアノとドラムだけかよ!」とは言いながらも、別に何かが足りない感はまったく無い。この動画を見ると、ピアノとドラムが双方を向き合うようにセッティングされていて、お互いの演奏の調子を確認しあいながら曲を進めている。曲って、きまったリズムに沿って演奏していくものじゃないのかという想いも一方にありながら、機械じゃないので、人間的な呼吸のようなものが大切なんだよな音楽ってと、あらためて思わされる。ライブなどでバンドマンたちが一斉に客席を向いて演奏するというのが一般的な演奏風景なのかもしれないが、この動画のように、観客などいない場所でアーチスト同士が呼吸を併せながら演奏を作り上げていくというのはとても興味深い。実際のライブではなかなか実現されないだろうなと思うような光景を見ることができて、この短いMV、何度見ても飽きることがない。
(2017.11.20) (レビュアー:大島栄二)