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オールタイムベストソングス! 〜2000レビューを超えて〜 part4

ジワジワくる曲たち

前野健太『100年後』

前野健太は平成の天才です。40年早く生まれていたら井上陽水あたりにも遜色ない大スターになったんじゃないだろうかと思うけど、40年早く生まれていたら社会も違えば感性も違ったはずなので、時代背景の違いだけで比較するのは無茶苦茶だということはわかっているつもり。しかしそれでも前野健太はもっと知られていいはずの才能ですし、彼の曲は今も日々折に触れてはCDを引っ張り出して聴いています。心を浄化させる力を持った独特の突き放し感が沁みる。この『100年後』という曲では好きなあなたと100年後に待ち合わせようねというコンセプトで、その不条理な待ち合わせがさも効力を持つかのような純粋さで淡々と歌われてます。多くの要素をすべて削ぎ落とした心のベクトルが、日常に追われて様々なものを覆い隠してしまっている心の原点を思い出させてくれるようです。


the coopeez『永遠に美しく』

淡々と進んでいく曲と画像が心をとらえて放しません。辛い時にはこういう淡々としたビートに心を委ねてしまってすべてを忘れてしまえばいいのにと思うんだけれど、忙しくて忙しくてなかなか音楽なんてまともに聴いてなどいられないという人のなんと多いことか。この曲が知っている真実って一体なんだろうねと、自粛自粛で家の中にい続けることを余儀なくされた機会に、考えてみるのも悪くないし無駄じゃないよねと強くお勧めしたいです。「何かしなければすぐ死ぬよ」って、まさに今の状況そのものですよね。


小林未季『スクリーン』

小林未季という人の曲をそんなに知っているわけじゃなくて。でも彼女の曲をこれまで2曲レビューしてきて、この『スクリーン』という曲の異常さ、異常さというよりも特異性にはホントに驚くばかりです。ここで歌われている「スクリーン」って一体なんだろうかと考え抜いたあげくに書いたレビューをご本人も読んでくれたらしく、Twitterで「この人はわかってくれている」と答えてくれて感激したことを思い出します。人と人との距離の取り方を学ぶ意味でも聴く価値のある、そして聴いた後に自分なりに考えてみる価値のある曲です。ソーシャルディスタンティングといった距離の取り方とはまた違った距離の話として。


ハンバート ハンバート『おなじ話』

ハンバート ハンバートには名曲が多くて、ほんとうに名曲だらけで、彼らのベストアルバムを何十回聴いたことか。いや、何百回くらい聴いてると思う。もちろんベスト2枚組の後にリリースしたものもたくさん聴いているし、とにかくフェイバリットアーチストは誰ですかと言われてすぐに名前を挙げたい2人です。その彼らの初期の名曲として多くの人が挙げるんじゃないんでしょうかこの『おなじ話』は。聴いてもらうとその淡々とした歌いっぷりにも驚きますが、最後まで聴いて描かれているシチュエーションと感情の交錯にも驚かされるはず。そしてある意味ネタバレの後でも、何度聴いてもその度に感情を揺さぶってくるこの曲の力強さったらない。本当に名曲中の名曲ですホント。


まん腹『どうせもう』

あなたにとっての青春のお別れソングって何ですか?松田聖子の『制服』ですか。それもいいですね。でも、僕のお別れソングはこれです。まん腹の『どうせもう』。このサラリとした別れへの想い。黙っていたら時間の経過とともに別れがやってくる。来てしまう。抗えないその別れに際してせめて第二ボタンをゲットするぜというアクションを起こせるのならまだいいけれど、そんなアクションなんて起こせないのが普通ですよ。この曲の「さよなら愛してる、どうせもう会えない、らららさらばばいばい」って歌詞のスゴいこと。普通はこうだよって感じで、たいした振付けもなくリズムに軽く乗って上半身を縦に揺らすだけで、感情の起伏も押さえて明るく「どうせもう会えないし」って歌うのってスゴくないですか。普通の別れを淡々とそのまま歌ってて。でもそういう普通の人たちの普通の何もない時間切れの別れにだって心の葛藤はあるのだし、そういうのを自分の心の中にだけ秘めてその後も明るく暮らしてる人がほとんどな訳で。そういうのが本当のドラマチックだと思うんですよ。


みたに『空の向こう』

もうね、泣きますよ。この曲本当に泣けますよ。歌に込められた優しさ。全体的に寂しげなメロディとギターの音が支配的で。歌詞も「こんな世界」と突き放してて。そんな「こんな世界」で君を照らせる何かになりたいんだと歌う。君が泣くのならせめて僕は笑っていようと歌う。こんな寄り添い方ってありますか。泣いてる人のそばで一緒に悲しんであげる。それが共感なのだとしたら、泣いているそばで笑っているというのは一体何なのか。その笑いが北風に凍える人を照らす太陽のような存在となれるのなら、一緒に凍えるよりもナンボかましなのかもしれない。だがそれは無神経と誹られることが怖くて、なかなかできることではないですよ。そんなことを淡々と堂々と歌ってて、この曲に救われる人は多いんじゃないかなあと思います。本当に何度もいつまでも聴いていたい名曲です。


RETO『部屋物語』

RETOの曲はどれも深くて、彼らがいろいろと試行錯誤をしながら作品を作り上げてきたことを聴くだけで感じられる。この曲も本当にジワジワと来ます。レビューにも書いたけれど「70年代のテイストを持った2010年代後半の「今」のサウンド」といった音で驚かされる。それを成立させているのが小山結衣の歌の説得力。惜しくも活動休止しちゃったけれど、小山さんはソロとしてまたやり始めているので、頑張って欲しいものです。



しんみりする曲たち

JUJU『メトロ』

JUJUは名曲多いけど、2018年のこの曲は本当にしんみりしました。MVの小松菜奈も美しいし、曲も歌声も美しくて驚きました。あらためてJUJUの曲の数々を聴き直したいとまでは思わないけれど、その分この曲をリピートで何度でも聴きたいなと思うくらいこれ大好きです。


松本佳奈『あの陽だまりは瞼の裏』

松本佳奈というシンガーは千葉県を中心に活動してたシンガーで、特別有名ということもないけれど、独自の活動をしてて、曲が本当に良くて、ずっと密かに追っかけていた人です。その松本佳奈が結婚をして出産をして。facebookでもつながっているのだけれど、最近は子育て投稿や地域活動などもいくつか投稿してて、ああ、歌うことと生きることが一体の人なんだなとようやく理解できました。ただただ職業として歌を生活から切り離して魅せている人もいますよ。その生活感の無さが魅力の一部ということもあるのだけれど、対照的に人生そのものが歌に重なっていることで、その全人生全表現が迫ってくるということもあって。松本佳奈という人はそういうシンガーの代表的存在です、僕の中では。だからこの曲だけを聴いてどうこうということを感じることはもしかしたらできないのかもしれないけれど、この記事は僕自身のオールタイムベストなので、やっぱり外すことのできない名曲なのですよ。


MinxZone『紙ピアノ』

MinxZoneはインディーズでの初CDを僕のレーベルからリリースしてくれた大阪のバンド。まだ4人体制だった頃、20歳だったか、その頃からずっと見てきて。その後3人になって全員で上京して、しばらくは僕の経営するカフェでバイトしてくれてました。いろんな形で応援してきた彼女たちの、これがメジャーデビューシングル。ボーカルゆかりの家庭事情とかもある程度知ってるのでこの「紙ピアノ」が表現している格差とかも涙無しには聴けません。それなのに常に明るく振舞う彼女たちの性格そのままに、この曲も格差があって悔しいよなんてことは微塵もなくて、紙ピアノを弾く自分の立ち位置からも「夢見ること、追いかけること、誰も拒んだりしないよ」と明るく前を向いている。あのメジャーデビューから10年が経過して、紆余曲折してきた彼女たちは今もちゃんと音楽活動を続けている。その不屈の生き様も含め、めっちゃ勇気をくれる曲です。


ケツメイシ『友よ ~ この先もずっと・・・』

ケツメイシはもう押しも押されぬ大ヒットメーカーで、この曲も「クレヨンしんちゃん」のテーマソングになっているらしく、その縁で当時保育園に通ってた息子が園で教えてもらって、行き帰りの自転車の後ろでずっと歌ってた。曲の言葉を繰り返し歌うことで小さな子供たちが友情というものをわかりやすく刷り込まれていくのですな。歌は時として刃にもなれば、心をコーティングする盾にもなり得る。そんなことを考えながら、涙を流して聴くことのできる僕的2017年マイベストソングだったわけです。


次は『ニヤニヤする曲たち』/『POPな曲たち』/『注目アーチストの曲たち』



article, 大島栄二

Posted by musipl