こんどうゆみか『弱虫ヒーロー』【感動ストーリーソングの秀作だけど、なんかむずがゆい】
感動を生む効果的な手法とかテーマとか、そういうのを全部詰め込んだような秀作だ。多くの人がこれに感動するだろうし、一般的にはこれで正解なのかもしれないが、ひねくれ者の自分にはどうにもリアルを感じない。子供の側から見た、親との関係性はどうなのかということについての歌なのだが、それを親に聴かせて親が感動するという、そういう仕立ての感動ソングという感じで、どうにもむずがゆい。このむずがゆさは一体なんだろうかと考えたら、そう、1/2成人式だった。1/2成人式というのは、10歳になった小学生に親への感謝を綴らせたりするという、昨今の小学校で流行しているイベントだ。そこには「子供は親に感謝すべき」みたいな大人の側の理屈を暗に子供に押し付けているような、そんなむずがゆさなのだ。いや、この世界観を否定しているのではない。すくすくと育って、親に感謝するような子供は素敵だし幸せだと思う。そう思われるように親も頑張るべきだと思う。だが、そうなっていない子供も親も少なからずいるし、そういうケースの親子もまた、親子だし、そういう形の素敵さや幸せも存在するということに、ぼくらは想像を広げるべきなんじゃないかなあと、そう思うのだ。また、僕の子育てのゴールは僕に感謝してくれるような人格に育てることではないし、感謝などするヒマがあったら自分の好きなことに邁進して没頭して、楽しい人生を送ってほしいと、ただただ思う。その過程で、自分の手を離れていくことが嬉しかったり寂しかったり複雑な想いはするだろうけれど。
(2018.1.19) (レビュアー:大島栄二)