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ベランダの路地『夜に』
【すみっこのすみっこみたいな名前のバンドの、ゴージャスな覚悟の歌】

これは、覚悟である。覚悟の歌である。人にはいろいろな苦しいこと、悲しいことがある。それを避ける術は無い。多分無い。きっと無い。老若男女を問わず、富める者も貧しい者も、みんな悩む。立場が違えば悩みの種類は変わるものの、すべての悩みから解放されることは不可能だ。だとすれば、悩みや悲しみをくよくよ思って過ごすのか、そういったことを考えるのを止めて前を向くのか、その選択しか人間には残されていないのだろう。この曲ではとくに具体的な苦しさや悲しさの説明はなく、サビで「夜に泣いた数を数えないでいることを誇らしく思って」と繰り返す。夜に泣くことを避けることはできない。泣いたことを忘れることも簡単ではない。だが、せめて泣いた回数を積極的に数えないでいることくらいは誰にも出来るはず。そんな誰にでもできそうなことが、前を向くための第一歩になる。第一歩を踏み出したからといってそれを自慢げにしてどうするという声は聞こえてくるだろう。もっと大きなことを成し遂げた時に初めて誇るべきだとかなんとか。しかし小さな一歩を誇れない人は大きな一歩にさえ誇ることなどできやしない。だから本当に最初の一歩を誇るということは大切なことだし、人生を前向きに持っていく上での重要な要素になる。この歌は、誰しもが逃げることのできない状況から、自分は前を向くのだという宣言であり、覚悟を示す歌だと思う。そんなポジティブなメッセージを、「ベランダの路地」という誰が省みるのだろうかというような隘路的名前のバンドが歌っていることが興味深い。そんんばすみっこのすみっこみたいなバンドのサウンドが思いの外ゴージャスだったのも心地良かった。

(2018.10.2) (レビュアー:大島栄二)


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review, 大島栄二

Posted by musipl