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King Gnu『Teenager Forever』【10代の頃のつまらない話をいつまでも】

ちょうど1週間前に紅白の感想としてKing Gnuの紅白はどうだったんだろうか、ただ単に演奏しただけでおとなしすぎたんじゃないだろうかというようなことを書いてみたが、その直後にこのMVが公開されてた。紅白で歌った白日は、MVでもかなりシリアスというかシックというか、めっちゃマジメで。彼らのおちゃらけたというかブッ飛んだというか、そういう一面は影を潜めてて、だから紅白だろうがどこだろうが、あの曲を歌うんならああいうテイストで歌うべきだよなと言われたら、ああ、そうだな、確かにそうだな、としか思えなくなる。

それに較べてこの曲はどうだろう。歌はかなりシリアスというかシックというか。歌詞をじっくりと聴くと切なさに胸がつぶれそうになる。

□  望んだこと全てが 叶う訳はないよ
□  そんなのわかってるんだ

だが曲調はかなりポップで、テンポ感が良くて、シリアスな曲だということを一瞬忘れさせてくれる。MVも冒頭でメンバーたちが謎の札束を渡されて、好きなことをするために散っていくという設定だ。ある者は南国に飛び、豪遊をする。ある者は極寒の地に趣き氷の張った湖で釣りをする。ある者はスカイダイビングをし、実弾の射撃場で拳銃を撃つ。ある者は女性に軽自動車をプレゼントし、一緒の記念写真を撮る。それぞれが望んだことを叶えようとする。だが、金で叶えられる何かには限りがあるし、そして常に思うようにはいかない。その象徴として、ボーカルの常田大希は南国でランニング姿で街を疾走する。冒頭ではただ街を疾走しているだけだったが、曲の最後で女性たちに追いかけられて逃げているということがわかる。愉快だ。ユニークなMVだ。なのに切ない。とても切ない。

お金があれば人生の多くのことは解決される。それはある意味真実だろう。だからといってあらゆることを保証して安心をもたらしてくれるものとしてお金をとらえ、お金のためにあらゆることを犠牲にして人生を過ごせば、そのしっぺ返しはいつか訪れるのではないかと思う。それでもお金無しに生きていくことはとてつもなく難しいから、やはりお金のために多くのことを犠牲にして生きていくしかないのかもしれないけれど。

□  いつまでも相変わらず つまらない話を
□  つまらない中にどこまでも 幸せを探すよ

旧い友人とつまらない話をするのは楽しい。仕事がらみの人との話が楽しくないのは、そこには多少なりの重要な話が存在するからだ。つまらない、なにも生み出さない話こそ楽しいのだ。そのことに気づけるのは結局はある程度歳を重ねてからじゃないと難しいが、若いうちからそんなことに気づいて作品に昇華させることができるから、彼らは才能在る者として人気を集めるのだろう。年明けに公開されたこのMVがほんの数日で再生回数400万回超え。そんな数字はどうでもいいし、紅白でのパフォーマンスが普通だったこともどうでもいい。彼らの曲をこれからも聴きたい。

(2020.1.18) (レビュアー:大島栄二)


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King Gnu, review, 大島栄二

Posted by musipl