プレパラート『あなた色』【今持っている素朴だけれども強い表現を大切にしていって欲しいなあ】
アコースティックギター2人組のMV。初ライブが約1年前というフレッシュなユニットで、HPもなく、Twitterアカウントしかまだない。そんな彼らの歌はとにかくシンプルで、熱唱だけが前面に出てくる。ギター弾き語りの場合サウンドもバリエーションに限界があるし、だからMVでの本人登場による演奏シーンも絵的なパターンは単調にならざるを得ない。それは仕方のないことで誰の責任ということでもないのだが、作る場面ではなんとか工夫をしなきゃという気になるだろう。それでこのMVでは曲のストーリーに出てくる「あなた」としての女性が登場するイメージシーンが多用される。しかし全編イメージシーンでもMVとして持たないのは当然で、メンバーによる演奏シーンも途中差し挟まれる。その、歌ったりギターを弾いたりしている場所の狭さって一体なんだろうとついつい注目してしまった。部屋のコーナーに椅子を置いて、その上でパフォーマンスをしていて、おそらく、2人とも同じ椅子の上で歌ったりギター弾いてたりしてるのだろう。もう少し広い空間とかなかったんだろうかという気もするが、意外と無かったんだろうなあ、多分。歌の作り方や録音の仕方などの点でも修正してブラッシュアップできる余地はいくつかあるとは思うけれども、それを現時点で指摘することにはあまり意味は無いような気がする。彼らの持ち味というか良いところというのは、心の中身をシンプルにストレートに出していけるところで、技巧に走っていない分、その良いところが全面に120%出ているともいえるからだ。バンドマンは普通、経験とともに上手になり、そつなくパフォーマンスすることができるようになる。だがその「そつのない」ということによって粗削りな中に持っていた良いところがかき消されてしまうこともよくあるのだ。プレパラートという2人組も、これからどんどん洗練されていくだろう。洗練されることで、より高いところに向かっていくのだろうと思う。だが、その中で形式的に上手になっていくのではなく、今持っている素朴だけれども強い表現を大切にしていって欲しいなあと、そんなことを感じながらMVを眺めていたのだった。
(2019.4.18) (レビュアー:大島栄二)