HERE『HELLO』【自然だ。ナチュラルだ。これでこそ演出排除の本音さらけ出しMVだ】
2年前にレビューしたことのあるHERE。どこで売ってるんだろうかという派手なスーツや衣装でMVにライブと展開していて、MVでも演出過剰なテイストで、まあそれが彼らのキャラであり売りなのだろうからもちろんイイし素晴らしいのだけれど、時としてその演出が前面に出てくることによって、彼らの本音や正体はどういうものなのだろうかと思うリスナーもいるのではないだろうか。いや、別に本音や正体なんてどうでもいいのだ。ディズニーランドに行ってミッキーと出くわしたら一緒に写真撮りたいし若い女の子がミッキーにハグしてたりするわけで、そこで「いやいや、それミッキーじゃないから。着ぐるみの中にどんなおっさんが入ってるかわからないじゃないか」などと言うのは無粋というもの。ミッキーの中に人なんて入ってないから。あれはミッキーだから。それが夢の国のお約束。だからね、バンドマンやアイドルの私生活とか本音とかどうでもいいんですよと言われたとしても、ミッキーと同じなんだよといえば「そりゃそうだな」と納得できる。HEREは派手な衣装に身を包んだスーパーハイテンションスーパーポジティブ集団、それでいいじゃないか。
とはいうものの、この曲では過剰な演出などほとんど無くて、彼らの意志や情熱みたいなものが伝わってくるような気がして興味深い。いや、よくみるとやっぱりどこに売ってるんだというような派手なジャケットを着ているけれど、これまでの彼らの衣装と較べたら地味な部類じゃないかな。そして不自然なダンスなんてまったくなくて、普通のロックバンドのアクションで、ストレートに彼らの言葉が響いてくる。だからといって彼らのポジティブメッセージが消えているのかというとそんなことはまったくなくて、曲調を含めて前に出ようとするパワー全開で心地良い。ただ、この曲では「歌え」という言葉が中心になっているので、もしかすると誰かを鼓舞するためのメッセージソングではなく、自分自身を鼓舞する歌なのかもしれない。だから、過度な演出などを排して、素直な自分たちを前面に出しているのだろう。3:06辺りでボーカルの尾形回帰が砂浜を海辺に向かってステップ踏んでいて、波が寄せてきて靴が濡れる。これまでの演出に従うなら波など恐れませんよといわんばかりにずぶ濡れになるところだろうが、靴がちょっと濡れたら慌てて後ろに下がっていく。自然だ。ナチュラルだ。これでこそ演出排除の本音さらけ出しMVだ。ちょっと言い過ぎたかな?
余談だが、このMVの2分過ぎで間奏のギターソロになるのだが、そこでギターの三橋隼人が妙にカメラ目線で弾いているのが面白かった。これまでミュージシャンなのにMVで演技させられてて、いや、本当はギターが好きだしナチュラルにカメラ目線したいんですよといわんばかりで、彼の本音もこういうところに表れたのかもしれないなと感じた。
(2019.11.15) (レビュアー:大島栄二)