ザ・ハイロウズ『千年メダル』【ヒロトが愛される理由はそういうところ】
よく聴いたなあ、この曲。ブルーハーツが解散してハイロウズが生まれて、なんだよブルハじゃないのかと落胆したものの、結果的にはこの曲が収録されたアルバム「ロブスター」を1番聴いたかもしれない。あまりに耳に残っているからCMソングに使われたんだろうとばかり思っていたが、チェックしてみるとCMに使われてたわけじゃないらしい。アルバムをあまりに聴き過ぎてて錯覚を起こしてたのかもしれない。このアルバムの発売が1998年で、考えてみればこの頃がCDを買って何度も聴くという音楽体験スタイルのピークだったかもしれない。CD1枚に3000円ほど払ってるのだから、元を取る(?)ために何度も聴くのは当然で。今のようにapple musicやSpotifyに月1000円ほど払えばいろんな音楽聴き放題というのと較べたら、1枚のアルバムに3000円かよという気もするし、それでは音楽を聴く機会も限られていただろうとも思うけれど、聴き放題になってから、1枚のアルバムを折りにふれ30回以上聴くなんて音楽体験はもうほとんど無くなったように思う。どちらがどうとかいう比較も虚しいけれど、今だって聴き放題なんだから30回でも40回でも聴けばいいじゃないかといわれればその通りなんだけれど、実際にはなかなか出来ないのだよなあと懐古趣味的な気分になってしまう。
甲本ヒロトの書く歌詞は、ブルーハーツの頃とハイロウズの頃とでそんなに違いがあるわけじゃなく、刺々しい角っぽさが多少少なくマイルドになったような気もするけれどそれが決定的な違いというほどでもなく。端的にいうならどんな曲にも優しさと男気が溢れている。この曲の中で「守れそうな約束を考えている」と歌ったあげくに「千年じゃ足りないか、できるだけ長生きするから」と結ぶ。いやいやそんなこと無理だろうし、それで守れるなら守れそうもない約束ってどんなことだよと呆れる。そんな呆れるような無謀な言葉も、優しさから湧いてくるのだなとわかるし、無謀を言い切るところに、バカな男に特有の男気が溢れていて、ヒロトが愛される理由はそういうところなんだろう。
(2019.5.11) (レビュアー:大島栄二)