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asmi『osanpo』【楽しい夜の散歩の雰囲気が詰まっている】

夜の散歩ってなんか好き。東京にいた頃は深夜だってそこら中に人がいて、コンビニの灯りで街中が煌々と照らされている感じで、ちょっとくらいだけの昼みたいな感じがしてて、夜だか昼だかの区別なんてそんなについていなかったように思う。京都に移ってからは結構早い時間から街は夜になり、昼間とはまったく違った表情を見せるようになる。ああ、人は家族のところに帰っているのだなとか、街全体が明日のために休息を取りはじめたんだなとか。もちろんそれは思い込みだし、夜に仕事やら活動やらしている人もいるんだけれど、それでもやっぱり街は違った表情に変わってしまうのだ。そういう中を、まあ主に帰宅目的だけれども、歩く。たまには散歩のための外出もして、歩く。そういうのは楽しいのだ。これが田舎と言われる部類の土地に行けば夜の散歩はまた意味合いが違ってきて、そこはちょっと危ないですよとか、危険が顔を出してくるのかもしれない。だから夜の散歩が楽しいとか好きというのが日本全国の人たちと共有できるとは思わないけれど、それでも夜に散歩に出かけるとなんとなく楽しいということは、割合が違っても多くの人になんとなくわかってもらえることなんじゃないかなあと期待したりする。

asmiさんの『osanpo』という曲には、そんな楽しい夜の散歩の雰囲気が詰まっているような気がする。ウォーキングとは違った散歩の、目的性のなさやあてどなさ、浮遊感とちょっとだけの寂寥感。何かを達成するつもりなんて無いしつもりがあっても達成などしないけれど、達成感なき満足感。気分を転換させてくれるなにか。そういった感じのすべてが、軽やかなリズムと時折数フレーム意図的にテンポが遅れるボーカル、全体的に頼り無さげではあるけれどところどころに見せる歌唱テクニックの絶妙さなど、まあ言葉にすると全部が台無しになるかもしれないからこの辺にしとくけど、何回も繰り返して聴いて、そう、毎晩この曲だけを聴いて散歩に出かけたくなるようなピースフルな楽曲だ。

(2019.11.7) (レビュアー:大島栄二)


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review, 大島栄二

Posted by musipl