Miyuu『fly』
【ロードムービー的な雰囲気に満ちた、音楽と人】
好き。曲にどことなくロードムービー的な開放感が満ちている。シンガーとしての声量的なパワフルさがかなり違うけれど、開放感的な、今どこにいるのかよくわからない感じがSuperflyに似ている。どんなシンガーなのかよく知らなかったのでググってみると、2016年くらいから活動している人で、YouTubeチャンネルでカバー動画を投稿するところから広がってきたらしい。まあその辺りは今時のサクセスストーリーとしてはよくある話だし、どうでもいいこと。だが、「落ち着く場所は海と山」だったり、一人旅が大好きでいつかバンで暮らすことが夢だとからしく、そういうことが背景になっているからこんなに曲がロードムービー感に溢れているのかもしれないと思うと、とても興味深い。以前の動画で、京都の名所で洋楽を歌うみたいなシリーズがあって、その頃の動画はかなりカメラ目線になってて、背景の知名度とともに自身のルックスも勝負ポイントにしていたのではなかろうかと感じられるのだが、このMVではそんなにカメラ目線のシーンがなくて、むしろ後ろ姿とかの方が目立つ。その分曲がストレートに頭に入ってくる。映像でも停車したバンの横にテントを張って過ごしているシーンがあって、それもロードムービー感を演出していると思うが、そのシーンは2分をかなり過ぎた後半に入ってから登場するもので、その映像が出るはるか前にロードムービー感を感じているということは、要するにこの曲と歌唱そのものにロードムービー的な要素が十分に詰まっているということだろう。ロードムービー的なものが音楽として重要かというともちろんそんなことはないわけだが、こうして表現者のメインとなる個性が表に出てくるということはやはり重要なことだといえよう。そんな表現ができているこの人の音楽をもっと聴いてみたいと思うようになった。
(2021.6.1) (レビュアー:大島栄二)
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