JJ-LAND『しわ』
【現実を超える希望を持つ強さが、理屈を超えたところでのエネルギーにつながるよ】
永遠という言葉を信じてもいいのはいったい何歳までなのだろうか。若い頃は今自分がやっていることをずっと続けていけるのだと普通に思う。だがある時そんなのは叶わない寝言なのだと気付いてしまう。子供ができると、この子の成長を永遠に見続けることなどできるわけがないということを悟る。肉体もどんどん衰える。自分には限りがあるのだと知る。それを知ると、さまざまな行動様式が変わるし、世界観もすっかり変わってしまう。健康を維持しなければと思うようにもなるけれど、健康になどまったく気を遣わなかった頃よりも、健康を維持する努力の虚しさを理解する。維持など、所詮無理なことなのだ。それを分かった上で、変化や衰えをも愛でる。それしかないし、それを否定すれば日々の老いに耐えられなくなるんじゃないだろうか。有限の自分を、その中でできることをやっていこうと思うようになるし、その一種の諦念こそが、自身への赦しのようなものになる。
永遠などあり得ないといった歌詞の歌を歌うJJ-LANDというのはどんなバンドなんだろうか、諦念を秘めた中年以上のロートルバンドなのかと思いきや、webサイトやinstagramに載っている写真をみる限り、かなりの若造集団であることは確かだ。若者なのに永遠などあり得ないと歌う。その言葉に含まれる意味や景色は僕が持っているものとはかなり違うのかもしれない。そう思いながら何度も聴いていると、永遠などあり得ないと歌いつつも、何気ないひと時を永遠と見紛うよと歌う。現実をわかっちゃいるけれど、それを凌駕する希望に満ちている。永遠などないはずなのにいつまでもそばにいてと、あり得ない希望を口にする。いいな。とてもいい。そういう、現実を超える希望を持つ強さが、理屈を超えたところでのエネルギーにつながるよなと改めて思わされる。
この独特のタッチに満ちたアニメMVがとても美しいが、彼らのチャンネルには同じ曲のスタジオセッションもあって、それをみると若々しい、というよりも初々しい彼らの姿を見ることができる。カリスマ性のオーラなどまったく持ってない普通の若者男子4人組で、売れるにはそこそこ苦労するかもなあと余計なお世話なことを考えてしまうのだが、冷静に聴くと、このボーカルの声がとてもいい。ナチュラルに伸びていく様子が心地いい。特別にハイトーンが出るとか、そういったわかりやすい異能のボーカルということではないけれど、全音域に渡って魅力的な声質をしている。もちろんそれは好みにもよるのかもしれないし、そういう地力のようなポイントを評価できる人は意外に少ないのだが、だからこそ、地味だけど優れたところを聴いてもらいたいし、彼ら本人たちも自信を持って活動に邁進してもらいたいと切に願うばかりだ。
(2021.6.7) (レビュアー:大島栄二)
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