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nikiie『Dolphin』
【音楽の変化の中に、アーチストの人生の変化など想像してみるのも興味深い】

2014年に最初のレビューをしたNIKIIEはそ2011年に年間でいちばん聴いたアルバムのアーチストだった。その後活動の様子をとんと聞かなくなり、つい最近偶然にこのMVを見つけた。こういうの、嬉しい。10年を経て届いた曲はなんともルードで抑揚を抑えた平坦なものだった。かつてのフェイバリットアルバムに収録されていた曲たちはどこかシニカルでありつつも希望をベースにした不思議なメッセージソングだったのだが、そういうテイストは影を潜め、ハートの温度が数度さがったような印象のあるものだった。こういうのをアンビエントというのか、それともチルアウトなのか。多分両方とも違うとは思うが、聴く者の体温を奪いかねないという点では共通する何かを持っているような気がする。

そういった変化を、進化と呼ぶのか、それともすっかり変わってしまったと切って捨てるのかは人によるのだろう。すっかり変わってしまった派の人は、あの頃の方が良かったといって離れていくのかもしれない。それはその人の自由だ。だが僕は、そうはなりたくない。むしろ、人気だった頃のテイストが変われば普通は人気も下がるもので、下がればビジネスとしての音楽活動は成り立たなくなり、音楽シーンからは消え、テイストが変わった後の音楽はリスナーのところまで届かなくなる。だが今はそんなことはない。活動を続けてさえいてくれればそれがアーチストからリスナーへダイレクトに届けられる時代。だからこそ、その変化の跡までも感慨深く受け止めることができるし、それこそ福音だと思うのだ。

小さな子供はいつまでも小さな子供でいるわけでなく、時に生意気に、親の想像や期待など軽々と飛び越えていく。そういう変化したかつての子供を「あの頃は可愛かったのに」と嘆いてただ過去の記憶を懐かしむ親もいる。だが、変化は当たり前のことで、そのリアルタイムの変化ぶりを直視しないでどうするのだと思う。少なくとも僕はそっち派。このNIKIIEの10年間での音楽の変化の中に、NIKIIE個人の人生の変化など想像してみるのも興味深い。もちろん彼女の人生の真実になどまったく到達しないんだろうけれど。

(2021.6.24) (レビュアー:大島栄二)


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nikiie, review

Posted by musipl