TOKYO LIE LIE『宵に時雨れて』【作者の実像が不明なままに多くのファンに支持されることもけっして少なくない】
音楽をやっていてそれを公表して第三者に聴いてもらおうという人は、普通自分が何者なのかをアピールする。ライブをやるから来てよ、音源を出したから聴いて(買って)よ。そういうアピールが次の音楽表現の糧となる。だが稀にそういう自分アピールをほ ...
CARIBOU『Never Come Back』【心を和らげるもの、うつくしい世界に私は救われた】
レビュー掲載時には状況がどうなっているのかわからないが、Caribouの新譜が出たのは、新型肺炎によるパニック(紙製品の買い占め、突然の臨時休校、イベントの自粛呼びかけ、などなど)が始まったタイミングだった。社会全体に広がる不安の中、 ...
Kitri『Akari』【静謐なイメージの上に多様なバリエーションを獲得する挑戦】
つい先日テレビでKitriを目にして。前回レビューした『羅針盤』で感じた透明で孤高な雰囲気が鮮烈だったから、テレビで誰かの伴奏的に演奏をしていたKitriの2人はそれをかなりギャップを感じて驚いた。彼女たちのような浮世離れした静謐なイ ...
sea’s line『Good Night』【すべての休息が必要な人に贈りたい、心を包んでくれる歌】
間違いだらけだけど、それも悪くない、悪くない悪くないね。こんなフレーズが繰り返される。優しいメロディだが、この繰り返されるフレーズが与える優しさの方が数百倍のインパクトで聴く者を包む。けっして強い調子で歌うわけでもなく、力を込めてパワ ...
川本真琴『ゆらゆら』
【ドロドロとした明るさで聴く者の心に突き刺さってくる自由な表現】
ずっと気になるアーチストというのはいる。一時スターダムとやらにのっかって大人気になってライブに行きたくてもチケットさえ取れないという状態にあって、そんな時に気になるのは当たり前だ。しかしやがてそんなスターダムとやらから距離を置き、とい ...
北里彰久『出発』【過度なギミックが無く、凛然とした歌が届く】
小さい声に耳を澄ますと、沈黙に意趣がほだされている気になる。爪弾かれるビート、弦の軋み。空間のさざめき、演者の吐息、オーディエンスや風や不意のアクシデントまでの、刹那さ。昨年に亡くなった大家ジョアン・ジルベルトは破天荒にして奇異な生を ...
Deep Sea Diving Club『あくまとおどる』【どちらか、ではなく、どちらも。組み合わせによって複層の景色を見せることを可能にしている】
音楽をサウンドやリズムの種類で分類するジャンルという指標は、とても便利なのだけれど、本当にそれを表現の分類として十分なものとしてていいのかという疑問は常にある。長渕剛と山下達郎を同じ音楽表現者として並列に置いていいのか。いや、違うだろ ...
サンボマスター『ラブソング』
【作者の想いと、それとは関係なく起きる事象と、リスナーの心】
サンボマスターはギターのバンドだ。少なくとも僕の中ではそう。山口隆の抜きん出たギターセンスとギターテクニックがなければ、サンボマスターは知名度を得ることはできなかったのではないだろうか。彼のギターを最初にライブハウスで聴いた時は衝撃だ ...
Squarepusher『Terminal Slam』【凶悪的なまでに最強のエレクトロミュージックと、めまぐるしく移り変わっていく映像】
ついつい日本が舞台となるMVを扱ってしまいがちな私だが、この曲の疾走(暴走)感満点の映像にぴったりなのは渋谷の街以外にない。ディレクターは真鍋大度で、彼はPefumeのライブ演出も手がけている(昨年のコーチェラでの彼女たちのステージは ...
RIOT JUNCTION『約束』
【偏見に負けずに頑張ってバンドマン!】
恐怖は人を狂わせるのか、それとも恐怖は人間の心の底を表に出してしまうのか。それは東日本大震災の時に思ったことだが、昨今の新型コロナウィルス騒動でも同じことを思わされている。つい先日、Twitterで見た投稿。「楽器屋に行った。店を出た ...