Laurel Halo『Jelly』【現在のエレクトロミュージックの最先端】
「宅録女子」というカテゴライズ自体の良し悪しは置いておくとして、もはやその呼称(によるイメージ)が枷になるくらい、彼女は自由で刺激的な作品を生み出した。音数過多という意味ではなくて、すさまじい情報量の音楽だし、時間をかけて計算され尽く ...
Julia Jacklin『Pool Party』【まっとうではない何かの先にある、別にイイよね感が素晴らしいよ】
ジュリア・ジャックリンがひたすらルーズに踊っているMV。するとランニング姿の肉体だけマッチョなおにーちゃんが入ってきて体操を始める。不自然だ。不自然だが映像はそうなんだから仕方ない。退廃的というか、淫靡というか、いや、淫靡というほどで ...
安藤裕子『パラレル』【走れよ 風が吹いて 始まりだよ 手を取って あの海へと】
転倒のときに彼は何を想っていたのだろうなと考えるくらい不粋なことはない。きっと今日の昼御飯や納品管理がどうとかそんなもので、だから、別に床で存在がこけても、連絡が褪せても、どうも想いもしない。ELTやジュディマリが好きだったな、くるり ...
ピロカルピン『ピノキオ』
【宗教の経典のような、突き抜けた先の希望】
ピロカルピンの新譜本当に良いな。アルバム『ノームの世界』からのMV「ピノキオ」と「グローイングローイン」はいずれもピロカルピン独特の淡白なポップサウンドに、苦境の中からの希望が歌われている。苦しいことを苦しいというのはもちろん良いのだ ...
Radiohead『Man Of War』【もう少し緩やかな20年の歳月であったらよかった、とは言わないし、言えない】
どんな生物にも、“生老病死”という楼門のどこにも実のところ出られはしないのだと思う。脳だけを保存、フリーズして電子化してもその未来の先で、誰が俟っているのだろう。生きたら老い重ねる。そして、ときに病気を患い、“こと切れる”こともある。 ...
butterfly inthe stomach『やっちまいなローリングサンダー』【こうやって活動を10年に渡って続けているというのは】
インディーでのデビューアルバム以来注目しているロックバンド。それが2007年だからもう10年だ。butterfly inthe stomachは当時からメチャカッコよくて、一時期ちょっと丸くなったかなという頃もあったが、この新曲はシン ...
Fleet Foxes『Fool’s Errand』【雄大で生命力に満ちあふれたフォークロックの完成形】
6年ぶり3枚目となるアルバムがやっと出た。待ってました、と歓喜の声をあげずにはいられない。もうバンドとしては活動しないのだろうか、とやきもきしながらも長らく待ったかいのある、すばらしい出来栄えだ。フォークロックの温かみを感じられるのは ...
LILI LIMIT『LAST SUPPER』
【別離のあとにどこかで、会者があるだけに、その固定的な部屋は出よう】
最後の晩餐には裏切りが必ず、どこかにある。
だからといって嘆くことはなく、こういうメニューで、こういう配置で、と言ったところで適わないのが人間の持つカルマのような何かで、そこを極端化してしまうと、美術館には誰も訪れなくなっ ...
うたたね『うつくしいもの』
【ミニマルな音楽構成から空へと無限に広がるかのような壮大さ】
瑞々しい田んぼの光景から始まる。田園風景は様々な自然を映し、開放的な和室でギターを奏で、歌を歌う姿を映す。どれもが美しい。雨の大地も、雲間からの陽光も。京都で暮らすようになるまで、山の間に雲が霧がかかり、遠くの山が霞んで立体的な重なり ...
松崎しげる×布施明『君は薔薇より美しい』【両者の張り合いを聴いていると胸に迫りながら、不思議と感動する】
「いい声」と「声量がある」っていうのは当たり前だが違う。歌手は声の表情や肌理細やかさで何かを訴える。勿論、多様なジャンルや歌う内容によって分かれるものの、今、日本において声量がある歌手といえば、誰なのだろうと思うと、記号としても松崎し ...