Ana Claudia Lomelino『Conchinha』 Next Plus SongKasabian『You're In Love With a Psycho』

パノラマメロウ
『二本足の唄』
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　ナチュラルで自然な感じのダークネス。こういうのが一番怖いと思う。いかにも凶暴な風体の人が金属バットを持ち歩いてたら注意して避けて歩くけれど、普通の印象の人が凶器を持って歩いていたら、何の注意もすること出来ずにすれ違うだろう。いや、それはけっして仮定の話ではなくて、きっと毎日の生活で頻繁に起こっていることなんじゃないだろうか。
　それは具体的な武器としての凶器のことだけではなくて、心理的な狂気も含んだ、追いつめられた果ての暴力を内包した社会がすでにここにあるように思う。SNSで日々繰り返される暴言と罵倒のバトル。それを発している人が日常生活のリアルでそれを吐いている訳もなく。だから、僕の隣に、あなたの隣にいる人が日々の暴言と罵倒を繰り返していると考えた方が自然のことだと思うのだ。
　こういう曲をネット上や音源としてただ聴くというのは、表現者と向かい合って聴くのとはまったく違う行為だ。厚い扉で閉鎖されたライブハウスで、この普通のルックスの人たちがこのダークな歌を熱唱しているのと対峙することを想像してみる。どんな気分になるんだろうか。画面やスピーカーのこちら側という安全圏で聴くのとはまた違った緊張感や興奮感動がそこにはあるだろう。いやもちろん、彼らが客席の人たちを刺すなんてことは99.99%有り得ない。だが、普通の人の表面からは判りようもないダークな内面を、ネットを通じた仮面を武器に垂れ流すのとは違って、人と人とが対面した状態で本音を吐露する。この希有なシチュエーションが、ライブというものの本質だし、価値なんだろうという意味で。
(2017.5.9) (レビュアー：大島栄二)
 

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