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有刺鉄線
『あの頃、オレンジの靴』

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 パンクバンドというのは社会への反発を出発点にしているが、今となってはもはやスタイルのひとつ。カッコいいかどうかがその判断基準になるのだろう。有刺鉄線というバンドと出会ったのは2006年頃のことだっただろうか。パンクバンドにしては律儀で、売れるために貪欲で、そのくせどこか抜けていて。しかし一度ステージに上がると一般にパンクバンドとして求められている要素をすべて持ち合わせたパフォーマンスを見せる、カッコいいバンドだった。彼らは1stアルバムを発表した後にギターの山崎以外が脱退という解散状態になりつつも、新しいベースとボーカルを迎えて再スタート。通常ならボーカルが代われば同じバンドとして存続するのは難しいが、それを可能にしたのは、このバンドが太めのギタリスト山崎義則こそが有刺鉄線だと、メンバーもスタッフも、そしてファンも認めていたからなのだろう。メンバーチェンジ後も精力的に活動し、ツアーにワンマンと順調にステップアップしていたものの、またも2011年に突如解散。まもなく5年が経過する。バンドの成功にはいろいろな要素があって、どんなに才能があっても様々な巡り合わせに恵まれなければ思うように道は開けない。有刺鉄線解散後に山崎が立ち上げたナミダロジックから、山﨑は昨年脱退し、今は1人の音楽家という肩書きでいるそうだ。解散から5年近く経過した今も彼らのHPは独自ドメインのまま消えることなくネット上に残っている。費用を払わなければ消えるのが当然なのに、誰かがそれを払い続け、有刺鉄線という存在を消さずにおきたいと抗っているのだろうか。そんな小さなところに、僕はバンドというものの意志を感じてしまうのだ。
(2016.3.5) (レビュアー:大島栄二)
 


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