清志郎の歌で僕が1番好きな曲は『体操しようよ』で、2番目は『ヒッピーに捧ぐ』。3番目に好きなのがこの『君が僕を知ってる』だ。だったら1番好きな曲をレビューしろよと言われそうだが、3番目に好きなものを紹介する意味は、ファンの人にはきっとわかってもらえるさ。
RCサクセションは僕にとって青春ど真ん中で、おそらく一番ライブを観たアーチスト。だからこそ1990年のアルバム「Baby a Go Go」のリリース後に無期限活動中止をした時のガッカリ感は大きかった。その後音楽業界の末端で仕事をし、レーベル業を長く続ける中で、バンドというものは生き物で、算盤勘定やファンの期待などでスムーズに進むなどということがあり得ないのだと骨身に沁みて、ようやくその活動中止にも理解を示せるようになった。だからRC時代の盟友同士である忌野清志郎と仲井戸麗市が和解したのは嬉しいことだったし、こうして2人で昔の曲を奏でているという映像は宝物だという気分になる。
RCのことはすべての世代に解るものではなく、若い人たちには一種の伝説か、はたまた「誰それ?」という存在なのかもしれない。それぞれの人は自分の時代に登場する自分だけの伝説を見つけて、その伝説がリアルタイムに起こす奇跡や騒動を、自分のことのように一喜一憂すればいいのだと思う。それは別に音楽である必要もなく、絵画でも小説でも漫画でもなんでも良い。もっとも心が敏感な時代に見つけた伝説だけが、人生の宝物になるのだから。