jam today『ラムネの泡』 Next Plus Songイツエ『言葉は嘘をつく』

村田知哉
『レインコート』

 音楽にサウンドと歌詞がある以上、バランスが50対50であるはずがなく、どんな曲もサウンドにウェイトがあったり、逆に歌詞にウェイトがあったりする。ソロミュージシャンは多くがギターを弾き語り、語ることにウェイトを置き過ぎる傾向があるのだけれども、この村田知哉のこの楽曲は言葉も響く楽器のような役割を持ち、トータルな意味での音のシャワーを浴びせかけてくれる。このビデオのように洗練された絵を伴って曲を聴くことになるとサウンドの鮮烈さを時として見落としてしまいがちだが、このビデオで楽曲は単なるBGMなのではなく、強い存在感を持って耳に迫ってくる。何度聴いても言葉が意味し表現する情景が頭の中に留まることなく、ファンクなリフを地味に奏でるギターの音や、ずっと叩きまくることのないドラムのわずかな瞬発などの音単体が独立して迫ってきていることばかりが脳に焼き付けられる。スタイリッシュな映像はそれだけで見ても美しい現代アートのようだが、途中楽器や音符や車輪や街頭などあらゆるものが雨のように降り注ぐさまを描き、それを避けるようにしながらも正面から受け止めるレインコートの2人が、まるでこの音楽を聴く者の2つの耳であるかのようで、この曲に似合った美しさで色を添えているように感じる。
(2014.6.14) (レビュアー:大島栄二)
 


   
         
 


 
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