おぐまゆき
 
『音楽』
 なぜ響くのだろう、おぐまゆきという人の歌は。実際に会ってみるととても寡黙な人で、寡黙というより、人と話すのが苦手らしい。だったらコミュニケーションはおろか表現などできるはずも無かろうというのがまったくの間違った先入観で、この人は自分の心の中にある何かを表に出そうと懸命になっていく。それがたまたま歌という形になったに過ぎない。
 最近ある友人と毎日のように語らっていて、その中で、人はどういう過程で人に……
 
  (レビュアー:大島栄二)  

 
『路地裏の僕』
 情念という言葉でしょうか、この歌を表すのに適するのは。でもそれでは足りないような気がします。「僕を愛して」という言葉と「僕をすてないで」という言葉が交互に入り交じりながら叫ばれる。聴いていて、男女の関係だけではなく親と子の関係が歌われているような錯覚に陥りました。追いつめられた状況の心は、時として最低限の振る舞いをさえ最大の愛情と思い込む。それは不幸なことなのでしょうか。否、その感受性を持つことが、実は幸せへの近道なのだと……
 
  (レビュアー:大島栄二)