Salty Tongue『世界の真ん中で』
POLYSICS『Piko』
東京初期衝動
『ロックン・ロール』
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聴いていてハラハラする。鳴らす者と聴く者の間にある不文律のような取り決めがすべて無効になったようなワイルドさ、荒くれぶりがハラハラさせる。なんだこの息継ぎは。なんだこのドラムの叩き方は。普通だったら、下手なバンドだなということになる。なったとしてもまったく不思議はない。なのに、ただ下手ということではない何かが突き刺さってくる。それもものすごい勢いで。
新しいものが現れる時は、いつもヘンだ。ヘンじゃなければ、それは新しくもなんともない陳腐なありきたりなものでしかなく、だから安心はできるけれども、まったくドキドキしないし、ハラハラしない。その点、このサウンドは新しい。新しいのか? ただただヘンなだけじゃないのか? いや、やっぱり新しい。彼女たちのTwitterやインスタを見に行くと、そのアイコンがかなりヘンだ。プリクラ、いやスマホのアプリだなアレは。目を大きくしてツルスベ肌にするやつ、ギャルっぽいテイストになるアレの、その写真がアイコンだ。「オレたちはロックだ」「あたしたちはロックだ」と手と肩に力が入っているミュージシャンなら絶対に選ばないアイコンで、なんだこのナチュラルさはと驚いてしまう。そう、ロックもロックっぽいサウンドとテイストをコピーして再現することはできる。誰にだってできる。しかしそれではヘンなものにはならないし、ハラハラもしない。要するに、ロックの皮を被っただけで、ロックではないのだ。しかしこの東京初期衝動というバンドはハラハラする。ナチュラルで、そのままで、ヘン。こういうのとてもワクワクする。今後がどうなるかとか、そんなのはまったくわからない話で、だってそうでしょう、将来が約束されたビクトリーロードに堂々と乗って進んでいくなんてまったくロックじゃないし、退屈すぎるわけで、だからこの人たちがある日突然ロックなんてつまんないといって普通に就職したりするかもしれないし、悪い大人に騙されて型にはまった音楽しかかなでなくなったりするかもしれないし、強い自我と勝手な感性でロックの獣道を探し当ててちょっとずつ進んで大成していくかもしれないし。リスナーとしては遠い将来にも大きく強いロックミュージシャンとして居続けて欲しいけれども、そんな先の宛てのない話に想いを馳せるよりは、今ここにあるハラハラに耳と心を委ねる方が先決だろうという気がする。
(2019.10.11)
(レビュアー:大島栄二)
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