SOFI TUKKER『Swing』
きしのりこ『感謝状』
ワタナベシュウヘイ
『I'm free』
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夢見る覚悟を決めたのさ。この歌詞にすべてがこめられている。自分の好きに生きるということが夢を見るということなのだろうし、それには当然苦労も伴う。安定した生活が楽に決まっているけれど、その楽な道がどこかの企業に勤めるということであれば、それにはそれなりの苦労も付いてまわる。その生き方を好きな生き方だとして夢見る人だっているわけで、そのことを否定するつもりはない。だが、企業人として生きることで、夢を諦めたと感じてる人もいる。若いうちは特にそうじゃないだろうか。そういう若者が夢を追うと言い出すと、大人は「そんな甘いことを言ってるんじゃない」と説教したくなってしまう。それで、ほとんどの若者は夢を諦めたりするものだ。本音を言えば、それで諦められるような願望は夢ではないんだろう。ところが、そんなことでは諦められない本当の夢を抱えている人もいる。そういう人も他の願望レベルの人と一緒に説教される。説教をする側の強圧的態度と脅しのしつこさと、そしてなにより理解のなさ。そのせいで夢と願望の狭間で揺れ動いている若者は次々と断念させられていく。それで断念するのだから本当の夢ではないよといえばそれまでなのだが、いくら本当の夢だったとしても、親から勘当とか言われてしまったら、それでも貫かなきゃならない夢って、夢を追うハードル高過ぎないか。そんな親や周囲を説得しなきゃ夢を追えないって、悲しすぎるよ。
だから、この曲で歌われているように「(夢を追うのに)理由なんて無くていい」という魔法のキーワードが有効になる。「なぜそれをやるんだ?」と問われたら「理由なんてないんだよ。やりたいだけなんだよ」と言えばいいし、「だから、なぜやりたいんだ」としつこく聞かれたら「うるせえよ。やりたいからやりたいんだ」と言い返せばいい。まあそうやって夢にトライするハードルを下げると、本当にただの願望にしか過ぎない人までトライしてしまって人生棒に振ることになるケースが増えるだろうという懸念は無いわけじゃないけれど、じゃあ棒に振らずに済んだ人生って一体何なんだと考えはじめたら、むしろ棒に振る機会が増えるのは良いことなんじゃないかとさえ思えてくる。ここから先は自己責任でね……。
ワタナベシュウヘイの歌う I'm free は、内容的に結構重いテーマなんだけれども、軽やかなポップチューンと小気味いいテンポで展開するので、アイムフリーって叫ぶの気持ち良さそうだなという気分にさせてくれる。夢にチャレンジする人は、結果がどうなるかなんてわかってないわけで、だから大いなる希望と底の知れない恐怖を同時に抱えている。そんな人こそ、この曲を聴くべきだろう。アイムフリー、アイムフリーと、自分を奮い立たせるポジティブさをちょっとだけ分けてくれそうな、そんな現代のメッセージソングだ。
(2019.8.15)
(レビュアー:大島栄二)
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