西城秀樹『ブルースカイブルー』
SAPPY『pathos』
神田莉緒香
『今夜ひとり、見えない月の下で。』
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たまたまMVを見て、なんだこれイイな沁みる歌声だな誰だろうなと思ったら、自分が知らないだけで結構メジャーな人でした。プロフィールを眺めるとデビュー前からの活動が結構ユニークで、独自にあれこれとチャレンジしてきている人のようでとても好感持てる。なので他の曲も聴く。以前のポップ全開みたいな曲を聴くと、あれ、このスタジオでピアノ弾いているのとかなり違うぞと思う。でも3月に公開された「主人公になれなくても、」という曲はバラードでしっとりしてて、この曲に近いかなと一瞬思う。けど、やっぱり違うな。すごく歌い上げている。熱唱している。それに比べるとこの曲はあっさりと力の抜けた歌い方で、等身大という印象。どういう姿がいいのか、どういう曲調がいいのか。ずっと昔から聴いている人からすれば聴きはじめた頃の感じが好きなはずだし、途中から聴いた人はその途中の頃の感じが好きなはずで、今さら聴いている僕の感想なんて「ケッ」って感じで鼻でせせら笑いたくなるはず。たぶんどれも正解で、その人その人のアーチスト像や理想の形があるのだろう。
同じことをやっていたのではマンネリになって飽きられる。だから常に新鮮であるために変化を続ける。それは、良いことだ。だが変化の過程でその変化を善しとしない人も現れ、いろいろな言葉を投げかけるだろうし、黙って去っていったりもするだろう。それでも、変わっていかなければならないのだ。
この曲を聴いていて、力の抜けた等身大のような印象があると書いた。その等身大の彼女が、「明日世界が終わるとしたら〜早く布団に飛び込みたい」「本音を言えば認めてほしい」と歌う。そこに、彼女の苦悩が見え隠れするよう。「変わる、くるくる世界は廻る、でも私は変わらないまま」という歌詞にも、変わっているのは自分ではないのだという強い想いがにじみ出ている。派手なサウンドに護られた曲ではなく、こうした静かなアコースティック音だけに載せて歌う等身大の自分。それがじんわりと染み入ってくるし、心地良い。前に進もうとして、なお思い通りにはいかなくて苦悩するすべての人に、この曲はきっとダイレクトに響くだろう。
(2019.7.29)
(レビュアー:大島栄二)
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