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大貫妙子
『横顔』

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 大貫妙子というと名曲てんこ盛りだが、個人的にはこの曲。切ない歌詞に、その切なさを感じさせぬように気丈に振舞おうとする意地のようなものさえ感じられるような、凛としたメロディがとても良い。大好きだ。1978年のアルバムに収録された1曲で、その頃にアルバムを聴くほどには大人ではなかったから、僕は一体いつこの曲を聴いたんだろうか。名曲なので何度かカバーされて、矢野顕子の『SUPER FOLK SONG』でのカバーも、EPOのカバーも聴いている。でもそれらは大貫妙子の歌うバージョンとはまったく違っている。矢野顕子は昨年CMソングとして再カバーしていて、それは『SUPER FOLK SONG』のバージョンともまた違っているものの、やはり大貫妙子のバージョンとはかなり違う。単なるコピーではないので、大貫バージョンと似せる必要はないし、まったく違う曲に仕上がるところに矢野顕子の才能が現れているわけだが、やはり、大貫妙子バージョンが好きな者としては、彼女のオリジナルが聴きたい。今やYouTubeで何でも聴ける時代のように思えるが、実際には古い音楽は想像以上に存在していないし、大貫のようにテレビにほとんど出ないアーチストならなおさらだ。そんな中、動く大貫妙子の「横顔」はかろうじてひとつ公開されていた。これは2006年の8月に行なわれた矢野顕子主催のライブの映像。細野晴臣や井上陽水も登場したという豪華なライブ。その中で、大貫妙子は矢野顕子がカバーしたこの「横顔」を歌う。矢野顕子も自分がカバーした「横顔」のようなかなりのアップテンポなピアノとは違う、大貫オリジナルに近い演奏を披露する。ああ、いいな。途中で大貫妙子が歌詞を失念し、やり直すという場面があるが、それもまた良い。矢野顕子の美しい間奏に聴き入っていたのだろうか、2番の歌い出しを見失って、慌てて歌おうとして。矢野顕子も何もなかったのように続けようとするものの、やっぱりそれはダメだよと思い直すように大貫妙子が仕切りなおす。矢野顕子もその仕切り直しに即妙に対応する。長年の付き合いのある、プロ中のプロの2人の対応だなあ。いや、プロ中のプロなら間違うなよという指摘もあろうが、それはそれ。ハプニングもライブの醍醐味だし、その処理の仕方も、ライブの楽しみなのだ。今でもコンスタントにライブをおこなっている彼女、いつかどこかで生のライブを聴いてみたいものだ。
(2019.7.6) (レビュアー:大島栄二)
 


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