DJ、トラックメイカー、多くの面で世界にも名を響かす石野卓球氏と俳優、CM、ラジオなど幅広く活躍するピエール瀧氏をメインに活動を続ける電気グルーヴ。昨今でも、バブル期を象徴するおねェタレントといえる日出郎氏の「燃える!バルセロナ」をリブートしながら、作品のリリース・ペースはライブ盤からベスト盤といえるようなものに意匠を加えたものから積極性を増している。そして、行事でもないが、『30』。
筆者が感慨深かったのは01年7月リリースの『The Last Supper』。メジャーデビュー10周年記念のセルフ・トリビュート・アルバム。初回盤は、銀色の細長いジャケットに、二枚のディスクが入っており、彼らをめぐるなじみのメンバーがリミックス、楽曲参加などで賑やかながら淑やかな印象もおぼえた。POLYSICSの「N.O.」のカバーは鮮烈でよく聴き、クラブでも踊った。そして、2009年の『20』。その前にオリジナル・アルバムの『J-POP』、『YELLOW』というテクノ・オリエンティッドな連作をリリースした上でのアニバーサリー・マテリアル。ただ、テクノ・ポップ、遊び心溢れる彼ららしい歌謡性あふれるうたものから、突き抜けるようなアシッドさより、電気グルーヴという大きくなった意味合いを彼らが対象化しているような内容で、そこに、さらりと華やかに見えもするテクノ・ミュージックの裏側を描くような「タランチュラ」のような曲がアクセントとして余韻を残し、アルバムとしての完成度も高かった。