GONTITI『Tree Rings』
Absolute area『遠くまで行く君に』
あいみょん
『マリーゴールド』
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昨年末の紅白歌合戦で注目していたのはあいみょん、DAOKO、Suchmosの3組。YOSHIKIとHYDEが一緒に出るとか、布袋がバックギタリストで石川さゆりと出るとかもあったし、サザンの演奏にユーミンが乱入したとかいうこともあったわけだが、ロックおっさんたちの動向はもうどうでもいい話で、初出場の人たちがどんな風にその場を活かしたのかということがやっぱり気になる。
結果的にいうと、あいみょんの圧勝だった。紅白歌合戦という場をどう考えるのかということが大切なのだが、ここを無理矢理ホームにしようとするのか、最初からアウェイだと割り切ってアウェイなりの戦いに挑むのか。ホームにしようとするやり方ももちろんある。それはどうしても違和感を生むし、無理がある。そのやり方は旧来のファンに「どこに行っても○○らしいよね」と思ってもらい、より強固な支持を獲得するという戦略としてはいいのだが、新しいファンを得ることは難しい。特に世代を超えたファンを獲得するには難がある。もちろん今や国民的スターなんて生まれない時代だし、その意味では新しいファンなど望まずにこれまでの支持をより確固としたものにという考えはある意味正しい。しかし、だったら紅白になど出る必要はないだろう。Suchmosは「汚いライブハウスから来ました」と宣言して演奏をした。だが淡々と演奏をしただけで、各種CMなどで使われてきた時の煌めきのような魅力にはつながらなかった。DAOKOも自分の出番に出てきて淡々と歌っていただけに感じられた。それはそれで別にいいのだが、新たなファンを獲得できたのかというと、難しかっただろうなあという気がする。もちろん楽曲や表現のタイプが紅白に向いていたのかという問題はある。また全世代に向けてアピールするべき種類の表現を指向しているのかということもある。DAOKOの場合はそういう種類ではないのかもしれないし、だとしたらなんで紅白に出たんだろうかという疑問は残らないではない。まあ事務所は少しでも可能性を求めて露出の機会は増やしたいだろうし、どんなアーチストであっても紅白に出ることが家族への恩返しになるという個人的な幸福にはつながるのであって、それを否定するつもりなどはさらさらないけれど。
あいみょんはどうかというと、そのアーチスト名からしてなめとんのかと思っていた人は多いだろう。特に年配の人であればあるほど。そういうのが音を聴く前の段階で拒否感を生む。もったいないことだけれど。そういう人に向けて、紅白というのは半ば強制的に聴かせる良い機会になる。しかも本人露出なのでアーチスト自身の人柄のようなものを垣間見せることだってできる。大晦日のあいみょんの出演順は前半の中頃という、少々中だるみしそうな時間帯でけっして恵まれているとはいえないあたり。しかしギター1本で登場したあいみょんはまるでオーディションで気合いを入れて演奏するようなガッツあるパフォーマンスをみせた。ああ、新人にとってはこれはオーディションなんだと再認識した。ここで年齢層の違う人たちをねじ伏せられるかどうか。あいみょんは既に多くのファンを持っており、今さら違う年齢層の人たちに好きになってもらわなくても十分にやっていけるアーチストだ。だから自分の世界を守るだけのパフォーマンスをしたところで誰も困らない。だが、あいみょんのそのパフォーマンスは勝負をしてる人の歌だった。世界を舐めているようなアーチスト名からは想像できないガッツを感じさせるものだった。マリーゴールドという曲の雰囲気がそもそも50代〜60代のニューミュージック世代にフィットするものだという点もあるだろう。短い1曲を歌って爽やかにステージを後にする。ああ、短いな、いかにも短かったな、もっと見たかったなと思った。きっと多くの、まだあいみょんのことをよく知らなかった人たちの心をつかんだに違いない。
国民的な音楽番組がほとんど無くなった今の時代において、同世代のファンだけで活動をしているアーチストがほとんどの中、紅白歌合戦というのは国民的アーチストに飛翔する数少ない機会なのだと思う。それを活かす必要などももう無いのかもしれないし、やったところで本当にセールスが増えるのかも懐疑的ではあるけれども、そこを突破していくことはアーチストが殻を破る上で重要なことだし、それを突破したのかもしれないと思えるパフォーマンスを久々に見たなと思い、あいみょんに拍手を送った大晦日だった。
(2019.1.7)
(レビュアー:大島栄二)
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