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LUCKY TAPES
『ワンダーランド』

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 LUCKY TAPESの初レビューが2年半前で、当時はまだその後の活躍が保証されているわけでもなく、すぐに消える可能性もけして小さくなくて、ただただポップだなあと感心したもので。しかし着実に支持を広げていって、今やそこそこ確固とした足場を固めている印象。今年春にはビクターからメジャーデビュー。10月にフルアルバム『dressing』をリリース。聴いてみる。すごく良い。新人の完成度かこれと首を傾げたくなる。インディーでの活動が前提の昨今だからLUCKY TAPESを新人と呼んでいいのかというのはあるとしても、メジャーデビューの時点でまだまだグダグダなバンドもたくさんいるし、メジャーだからと勇み足というべきか妙に肩に力が入っていたりするバンドもよく見かける。しかしこの『dressing』のリラックスさは一体どうだろう。ポップバンドだからと妙にポップなものを打ち出そうとか全然してなくて、もはや枯れ始めたベテランが自然体で出してくるような落ち着きさえ感じる。この『ワンダーランド』はそのデビューアルバムの最後に収録されたクリスマスソング。これを聴いていて、アルバム全体を聴いていて、彼らはポップという表現を、いくつかのパターン、フレーズやコード進行などによって実現しようとしているのではなくて全パフォーマンスを通じて行なおうとしているのだろうということがわかる。それは一体どういうことなんだよと聞かれても明確に言葉で説明することなどできない。簡単に言葉で説明できるのなら誰だってやるだろうし、その文法や公式が存在するのであればそれ自体がパターンであって、ポップはパターンによって再生できるということになる。そうではなくて表現者の姿勢や生き方そのものが音楽になり、その音楽がポップの形になって現れるということ。ロックで考えればわかりやすいが、ロックは音楽の種類ではなく人生そのものだとはよく言われることで、それはどういうことなのか説明しろと言われても難しいが、そのような概念が存在するし成立するというのはロックファンならよくわかること。それがポップでも有り得るということを実感することは実はあまり無くて、それを感じることが出来るというだけで彼らの『dressing』というアルバムは出色の作品だといえるだろう。彼らが紡ぐポップミュージックは音楽としての完成度が本当に高いなあと思うのだが、ここにメッセージ性が加わればさらに高みに届くだろうという気がする。とはいえ、そんなこと抜きに十分だ。クリスマスに、音楽でみんなに幸せが届きますように。
(2018.12.25) (レビュアー:大島栄二)
 


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