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Lucky Kilimanjaro
『ひとりの夜を抜け』

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 ほぼ1年前にレビューしたLucky Kilimanjaro。その時の曲はポップに純化したミュージック9割以上という印象だったが、この曲では歌詞にかなりの重点を置いた作品に仕上がっていてちょっと驚いた。昨日のレビューでは音楽は時代を反映するとして「駅が夜の1時でもうどこへも行かれやしない」というのが今の時代だなと書いた。それ自体けっして間違いではないのだが、Lucky Kilimanjaroの「ひとりの夜を抜け」では深夜1時であろうとも構わずにどんどんずんずん突き進む。進む姿がMVでは徒歩だ。徒歩でズンズン進む。無論それは比喩的な映像描写であって、ひとりの夜という言葉だって比喩的な描写なのだが、そこに含有される閉塞感の打開への意志が強く打ち出されていて心地良い。時代なんてものを感じたり考えたりすると、特に不況の時には前進することがバカだと罵られたりもするし、そのことで怖じ気づく。だが前進することの困難は誰かがそう吹聴しているだけなのかもしれなくて、前進してぶち当たってから「困難だ」と納得すれば良いだけなのだと言われてしまえば、その通りだよなあと前向きな気持ちになれる。この歌ではただ単に進めよと鼓舞するのではなく、現状の困難さや不安についても触れていて、怖じ気づく心持ちにも理解を示し、その上でなお背中を押そうとする。音楽のひとつの役割とはまさにこういうもので、もう少しの勇気が必要な人の背中を押してくれるこの曲の存在意義は大きい。それがLucky Kilimanjaroのカラフルなポップネスに支えられ、聴く者も知らないうちに前向きな勇気を心に芽生えさせていく。それに載せられて背中を押されて前に進んで、それでも失敗して挫折することはあるだろうが、その時にはまた別の心に寄り添う音楽を聴けばいいのだし、それぞれの状況に応じた応援ソングが在るということは、人生に音楽を持っている人にとって、そうでない人に較べた大きなアドバンテージだと思わされる。
(2018.11.27) (レビュアー:大島栄二)
 


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