吉澤嘉代子『女優』
ニトロデイ『ジェット』
阿部真央
『変わりたい唄』
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阿部真央も来年でもう10周年なのか。デビューアルバム『ふりぃ』が衝撃的で、なんだこの全方位反発ガールはと思った。何がそんなに不満なんだと不思議になるほど不満が詰まっていた。本当は不満などなくコンセプトで不満を演じていたのであれば、それは解る。バレる。だが阿部真央の不満は本当にリアルで、ああ、この人は本当に何かが不満なのだなと理解した。一旦不満のシンガーということでデビューにこぎつければ、それが自分を縛ることになり、以降も不満のシンガーとしての作品作りを心がけるようになる。本人も、周囲のスタッフもその成功体験にとらわれてしまう。そうなると実際は不満などない満足な日々の中で不満を探し、装っていく。結果不自然な不満だけが生まれ、リアルからは遠のき、リスナーの支持を失っていく。これはどのアーチストにも起こることで、最初の頃のスタイルやコンセプトにとらわれることで変化を怖れ、結果的にマンネリで物足りない作品ばかりを生み続けてしまいがちだ。だが阿部真央は2ndの段階で不満という武器をあっさりと捨て去り、ラブソングを連発した。それが可能だったのは彼女自身がコンセプトに頼る必要の無い、芯のある歌の持ち主だったからなのだろう。この曲でもポップとロックの境界線を軽やかに行き来するような自在さを見せている。ほぼ同時に公開した
「まだ僕は生きてる」のMV
にもまた違った軽やかさがある。自在だな。本当に自在な表現。かつてすべてに不満をぶつけていた人の10年ごとは思えないほどのこだわりの無さ。だが人間も10年も経てば環境も中身も変わるもので、それを変わらないようにと頑張ってしまうと、永遠の若作りおばあちゃんみたいなことになってしまうのではないだろうか。「変わりたい唄」というこの曲は、なぜ自分は外形的に変わっていくのかということを明快に歌っていて、この10年間の阿部真央そのものを象徴するような内容で興味深い。「もっと自分になりたい」なるほど、変わるということは自分を探す旅のようなものなのかもしれない。変わることを怖れて躊躇しているすべての人の背中を押してくれているようだ。「君が決めれば、世界は必ずその通り」良い歌だ。
(2018.11.24)
(レビュアー:大島栄二)
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