YONA YONA WEEKENDERS『誰もいないsea』 Next Plus Song小林未奈『誰のせい』

Mr.Children
『SINGLES』

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 ミュージシャンがアーチストになるためには自分のスタイルを確立する必要があり、確立したスタイルを築いてしまったら、それを壊すことは難しくなる。期待するファンが存在することと、何よりそれが自分の拠り所になるからだ。
 ミスチルの新曲はたった2分足らずの(これ2分15秒あるけれども冒頭23秒が無音です)ショートバージョンなのにちゃんとサビまで含まれてておおよその全体像はつかめるし、そこにミスチルらしさがたっぷりと詰まっている。これほどにミスチルらしい楽曲ならば、もはや新曲である必要など無いのではないかとさえ思う。彼らのHPでは「全シングル&アルバム配信スタート」とあるが、新作の配信はまだまだ先のようで、ファンならば新作が聴きたいとCDを買うのだろうか、それがビジネスモデルとして成立するベテランの姿は、とりあえず聴いてもらいたいと新作でも惜しげもなくストリーミング配信もするしYouTubeもショートバージョンなんてことはやらない若手の姿とは対照的だ。聴く方も配信というスタイルに馴染めないのか、それともCDプレイヤーがまだ家にあるからか、CDをいそいそと買い求める。それはもはやタワレコではなくamazonかもしれないが、ディスクを買って聴くというスタイルは自分が安心できるものだし、だいいち若い頃から聴いてきたミスチルのスタイルも自分が安心できるものだし。
 先頃バンクシーの作品がオークションで落札された直後に額縁に仕込まれていたシュレッダーで切り裂かれるという事件が起きた。バンクシーはすごいな。自分の作品を購入する人を蔑むような仕掛けを作り、その仕掛けを作品よりも優位に置くとはなんともすごい。スタイルを後生大事に守っていくアーチストとは真逆の何かで、それがスタイルを守るということよりも上位にあるとまでは言わないし、もしかしたらそれこそがバンクシーのスタイルそのものであるとも言えるのだが、アーチストとファンの関係性を考えたらやはり破天荒ですごい。すべてのアーチストがそうあるべきとは思わないが、時にはファンの期待を裏切って「ええええええ??」と思われるような作品でスタイルを更新していくようなことはどのアーチストにもあっていいのではないかと思う。
 とはいえ、ミスチルにはミスチルの考えがあるのだし、都合というものもあるのだから、彼らの音楽は彼らの音楽として続いていって、その中で守られているものと変わっていくものの妙を、真のファンだけが見抜いていくということなのかもしれない。それにしても変わらないよなあミスチル。出てきた頃の曲調そのままだ。あれから十分に歳をとっているのだから、歳を取ったことがよくわかるような、ミスチルの音楽を聴いてみたいとちょっと思ったりした。
(2018.10.6) (レビュアー:大島栄二)
 


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