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はなざわりずむ
『ステージ』

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 歳を重ねるたび、自分という価値が無くなっていくのかな。24歳のシンガーがそう歌い始める曲を聴くとドキッとする。その倍以上生きている僕の価値は今でもあるのかと。いや、あるよな。ありますよ。倍以上生きても価値がなくなることは無い、はず。サビに入っていくと「楽しくなくても笑いなさい、イヤだとしても頑張りなさい、それができないなら辞めなさい。音楽って窮屈だ」と歌う。そんな感じで言われているのだろうか。言われているのだろうか。誰が言っているのだろうか。クソバイスをするおじさんか、それともライブハウスのエラい人か。いや、辞めなさいまで言うのは事務所の人なのか。よくわからないけれども、よく考えたら別にシンガーに限らないことで、若い人たちは学校で既にわけのわからないルールに縛られて叱られて否定されて、自分という価値に自信が持てなくなっているのかもしれない。そうやって子供を叱る大人だって上司に叱られ、店長に叱られ、お客様に叱られる。叱る人もいろいろなストレスを抱えてて、そのはけ口をどこかに探して誰かを非難し、はけ口を探せない人は心を病んでいく。なんか、余裕無いんだよなあ。どうしたら余裕って生まれるんだろうとか思うけど、なかなか答えは簡単に見つからない。
 はなざわりずむさんがボソリボソリと呟くように歌うこの自信無さソング。ステージに上がっている人は一応お金を払って見てもらっているのだから最大の自信を持ってパフォーマンスすべきというのはもちろんなのだが、対バンの「あの子」みたいに上手に出来なかったと落ち込むというのがなんとも微笑ましい。そう、ちょっと落ち込めばいいのだ。ちょっと落ち込むことでストレスを解消して、コンビニスイーツでも食べて気分を換えて。上手に出来なかったとしても、好きな歌を歌うためにまたステージに上がれば良い。お金のためとか理由を付けて好きでもない仕事をして怒られているのに較べればよほど価値あるぞ。そうやって好きなことをしていれば、致命的なストレスに苛まれることなどないので、好きなことをやって、上手く出来なくてちょっと凹んで、また好きなことをやればいいのだ。それをあーでもないこーでもないと縛って叱ろうとする人など相手にすることなく、ただ好きなことを。この曲はそういう気付きを与えてくれる、究極の等身大くよくよソングと命名したい。
(2018.5.28) (レビュアー:大島栄二)
 


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