ニカホヨシオ『亡霊たちの楽園』
奮酉『なつかしき青春』
たんげまこと
『コールミー』
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僕らは楽曲がどうとかメロディがどうとか、そんなことについつい目を耳を奪われるのだが、声と歌、その力に接したらもうそういうのはどうでもいいという気になる。音楽の力って結局は歌い手の力そのものなんじゃないかと。それだって一方的な見方に過ぎないんだけれども、そんな一方的な見方に陥らせてくれる歌に出会うことはとても少ない。このたんげまことという人の歌を聴いた時、僕はそんな一方的な見方を真実だと感じた。思い込んだ。こういう声で歌を聴けば、その歌詞に何が込められていたとしても信じてしまうかもしれない。
音源を作るとき、ギター弾き語りの人は他の楽器を入れたがったりする。それ自体悪いことだと言うつもりはない。5曲10曲並べる時にギター1本だと単調になるというのはよくわかる。だから何を入れようか、ミュージシャンに手伝ってもらうのか打込みにするのか、そして仕上がってきたマルチトラックをどうミックスしようか、エフェクトはどうしようか、等々考えていくとキリがない。そしてそのキリのないことに頭を巡らせているうちに肝心の歌への意識がバランスとしてどんどん減っていく。仕上がった音源は、確かに音数的にバラエティ豊かなものになっているし、10曲通して聴いた時に単調とは思わない。でも、何か足りない。これ、感動できるのかって。
シンガーにもいろいろあって、歌唱力だけが判断の基準ではないので、もっとキャラや変化球的な何かで勝負するシンガーがいたって構わない。バンドサウンドのアレンジが得意なソロシンガーだってもちろんいるし、そういう人の作るバンドサウンドのCDは聴きごたえがある。でも、歌に力のあるシンガーの、そういう人のCDは、別にギター1本で構わないと思う。その歌を聴かせてくれよ。声を聴かせてくれよ。ギター1本で、別録りなどしないで、マイク1本で一発録りで全然構わない。そんなことを、このライブ映像は再確認させてくれる。歌声だけを聴いていたから、何度聴いても歌詞がどうだとかあまり頭に入ってこない。最後の「やり直しはきく」というフレーズで終わることだけが知覚される。「おお、もう一度聴こう」と思って聴き直すことになる。その繰り返しができるパフォーマンスというのは、意外と巡りあえないものだ。
(2018.3.24)
(レビュアー:大島栄二)
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