この時代における、オルタナティヴな位置から一気にフロントラインの尖端を目指すさまの鮮やかさが彼らの場合はブレなく映る。捻くれながら、どこか筋の通った美意識。ロック・バンドとしての何かさえも忖度されてしまうご時世で「内破」してゆき、BGMとしても消費させないクセも踏まえた上でのスパーク。昨今では「シュガーソングとビターステップ」の浸透性も大きかったが、この「君の瞳に恋していない」のホーンや多様なユーフォリックが混ざった昂揚性にはコステロの明るい曲に悲しい詞を、ではないが胸の奥底を絡めとるものがある。「Can't Take My Eyes Off You」はエヴァーグリーンな曲としてこれまでの色んなバンド、アーティストにカバーされてきたが、“君の瞳に恋してないけど 分かる”のが今なのだとも思う。瞳だけでは伝わらないややこしさを幾つものトラップを越えて、シンプル見つめ直してラブソングを指で艶美になぞる、それくらいでアダムとイヴの禁制も解かれるように。豪奢にハネるリズムの中でキスを交わすのは悪くない。それが泡沫の、目配せとしても。ピロウズやあらゆるバンドに愛されるのもわかる。