KEN THE 390『Winter Song』
Tune-Yards『Heart Attack』
杏子
『愛ね、暗いね』
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ハスキーな声が耳に残る。この人の絞るような声が揺れつつもファルセットに切り替わる瞬間の、その切り替え方が好き。歌の内容がどうとかメロディがどうとか関係なく、このファルセットへの切り替えだけでずっと聴いていられる。というかずっと聴いていたい。似た声は時々耳にすることがあって、でもその声だけで生き残っていけないのか、それとも僕の記憶力がダメダメだからなのかはわからないけれども、誰の声と似ていたかはなかなか思い出せない。悔しいな。でもこの人が今僕の前に出てきたのでそれで十分だ。このMVで浜辺を歩きながら歌うという比較的静かなパフォーマンスだが、
この人のライブハウスでのパフォーマンスが結構すごい
。高校生シンガーソングライターということなのだが、高校生の頃の自分はどんなだっただろうと思うし、思うと恥ずかしくなるくらい平凡だったし。じゃあこんなパフォーマンスをする高校生というのは今の時代に普通にいるのかというと、多分そんなにいない。というか大学生にも20代にもそうそういない。バンド上がりのソロシンガーがギター1本で弾き語ったりする時に、ギターだけだと寂しいとか物足りないとか言ってMTRを鳴らしながらパフォーマンスしてたりするのはよく見かけるが、その「ギターだけだと物足りない」というのが単なる言い訳に過ぎないということが彼女のライブを見るとよくわかる。ギターだけでは物足りないどころか、彼女の場合ギター無しのアカペラでも堂々と歌いこなすだろう。と思う。高校生にしてサマソニ2017のファイナリストということだが、それもよくわかる。これから是非飛躍してほしいものだ。アーチスト名の杏子は「あこ」と読むそうで、元バービーボーイズの杏子とは違うのだが、名前が浸透するまではそのことで苦労するだろうが、そんなことで潰れるようではそれまでなのであって、そんな言い訳に逃げることなく、この聴き惚れる声とパワーでずんずん突き進んでほしい。
(2018.2.13)
(レビュアー:大島栄二)
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